小夜啼鳥が愛を詠う

……次からは、絶対!独りで来よう。

たぶんさっちゃんは優しいから、誘えば一緒に来ると言うだろう。

でも、これは、興味のないヒトには睡魔との戦いの時間にしかならないかもしれない。

まあ、僕は楽しかったけど。



何気に振り返ると、既に天人の少女の姿はなかった。

外国人男性もいない……と思ったけど、こちらはいた!

てゆーか、こっちを凝視してる。

ん?

僕じゃないな。

彼は、さっちゃんをじっと見ていた。


……おいおいおい。

女連れだろ?

よそ見するなよ。

そりゃ、さっちゃんのほうが比較にならないぐらい美人でかわいいけどさ。


僕は、なるべく彼からさっちゃんを隠すように、歩いた。

彼の視線は、見所を出ても、ロビーにむかってる時も、まるで真夏の京都の空気のように、さっちゃんにねっとりとまとわりついてきた。

さすがにさっちゃんも気づいたようだ。

「吉野天人。」

外国人らしくなく、自然な日本語、それも京言葉の柔らかいイントネーションでそうつぶやいてから、彼は会釈して行った。

「吉野天人、だって。」

反射的にそう吐き捨ててしまった。

まるで僕の声じゃないみたいだ。

「そう聞こえたねえ。日本語上手。感動したのかしら。」

さっちゃんは、飄々とそんなことを言った。


……おいおいおい。

何を、とんちきなこと言ってるかなあ?

「さっちゃんのことだよ。もう。さっちゃんって、自分が綺麗でかわいい自覚なさすぎ。ほら。帰るよ。」

僕は本気でムカムカしていた。

さっちゃんの手を、いつもより強く引っ張ってしまう。

歩調も荒くなり、かわいそうにさっちゃんは足をもつれそうにさせながら必死についてくる。


……ダメだ。

落ち着け。

僕は何度も自分に言い聞かせる。

でも、正直なところ、そろそろ限界だ。

ぬるま湯の関係で、いつまでさっちゃんを別の男から守れるだろうか。


僕とは対照的に、さっちゃんはずっとニコニコしていた。

曇りのない笑顔が、僕への愛情をダイレクトに伝えてくる。

うれしくないわけがない。

釣られて、僕の気分も浮上していく。

ほんと、かなわないな。