小夜啼鳥が愛を詠う

平安神宮の鳥居で京都を感じるのか……。

何だか釈然としないなあ。

「鳥居おっきーい!平安神宮!お詣りしよ?」

さっちゃんは、両手を広げてはしゃいでいた。

……ダメだ。

幼少期にたった4年しか住んでなかったけれど……元住人としての思い入れが、さっちゃんの無邪気な願いを拒絶した。

「……お詣りしたいなら、ちゃんとした神社にしよう。ここはありがたみがないよ。」

さっちゃんは、不思議そうに僕を見た。

視線をそらして補足説明をする。

「ここはね遷都1100年の記念事業で建築された神社なんだよ。明治半ばだよ。」

僕の言葉は、さっちゃんだけじゃなく、少し前を歩いていた少女にも届いてしまったらしい。

振り袖じゃない……肩揚げした、まだあどけない少女が、おもむろに振り返った。

……少女?

いや、確かに少女なんだけど……やたら雰囲気のある、色っぽい子だった。

顔立ちは少女なのに、仕草がなまめかしいというか……。

遅れて向けられた目が、僕の視線とパチッと合った。

……その目に、吸い込まれそうになった。

この感覚はいったい……。


彼女は、すぐに目線を落とした……挑戦的な視線を隠すように。

白いうなじがくにゃりと曲がり、軽い会釈をされたようだ。

……口元は、嘲笑を堪えるかのように歪んでる。


なるほど。

僕の言葉に失笑したのだろう。

地元の子なのかな?

京都人じゃない僕が語ってることを、あざ笑ったのだろうか。

何か言いたかったけれど、さっちゃんは隣で話してるし、少女は婉然と作り笑いを浮かべてから、また前を向いて歩き出した。

……どうやら、行き先は同じところのようだ。

まだ小学生……薫と同じぐらいかな?

小さいのに、着物で、しかも1人でお能を観に来るって……どういうことだろう。

出演者のお嬢さんなのかな?

あっ!

そういや、池上宗真氏にもお嬢さんがいるって言ってなかったっけ?

あまり似てないけど、まさか、あの子じゃないよな?

ドキドキしてきた。

もし池上さんのお嬢さんなら……霊が見えるのかとか、聞いてみたい気がする。

少し前を歩く着物の美少女に近づき過ぎないよう距離を保って、僕らも会館に入場した。