小夜啼鳥が愛を詠う

17時になるのを待って、玲子さんは仕事を終え、私を車で送ってくれた。

「玲子さん、かっこいい。スーツ似合うね。」
そう言ったら、玲子さんは苦笑した。

「50過ぎたババアだけどね。」
「ううん!見えない。ママと同じぐらいに見える。」

私がそう言うと、玲子さんはまんざらでもないらしく、頬をゆるめた。

お世辞じゃなく、玲子さんは若返った気がする。
仕事して、活き活きしてるみたい。

本当は家にいるより、バリバリ働くほうが性に合ってるのかな。
お料理だけじゃなく、家事全般苦手だし、好きじゃないらしいし。

あ!
そうだ。
お料理だ。

「ね。わらびの灰汁抜きと、わらびご飯の炊き方、わかるの?私も手伝おうか?」

恐る恐るそう聞いてみた。
すると玲子さんは、あっけらかんと言った。

「わかんない!いざとなったら、なっちゃんに頼むつもりだったの。さっちゃんからも、お願いしてくれるの?助かるー。」

あ……そうなんだ。

そっか。

最初からママをあてにしてた玲子さんが、何となくかわいく思えた。



突然、私が玲子さんと帰宅したことに、ママは驚いた。

「え?どうしたの?……さっちゃん、光くんの別荘から帰ったのよね?え?玲子さんも一緒だった……わけないよね?」

玲子さんの笑顔が引きつった。
「さすがにそれはないわ。でも、あそこのくそガキに懐かれて、まとわりつかれてんの。」

「くそガキって……まんざらでもなさそうなのに。」
そうぼやいたら、玲子さんはちょっと赤くなった。

実際、薫くん、かわいいもん。
懐かれて、嫌な気しないと思う。

……てか、薫くんが玲子さんといつの間にか仲良くなってたのを目(ま)の当たりにして……ちょっと淋しく感じたのは、内緒。


大量のわらびを見せると、ママは歓声をあげた。
「すごい!え?これ、採ったの?さっちゃんが?」

「んー。薫くんのお友達の藤巻くんがね、わらびご飯を食べたいんだって。で、須磨の山で3人で採って来たの。」 

そう説明すると、玲子さんがつけ加えた。

「その藤巻の清昇(せいしょう)くんのね、亡くなったおばあちゃんが昔よく炊いてくれたってゆーからさ、安請け合いしたんだけどねぇ……調べたら、灰汁(あく)抜きとか必要だって?こりゃ私の手に負えないわってことで、なっちゃん、助けて!」

ママは、あっさりうなずいた。
「これだけあったら、他にも色々作れそうよ?……でも灰汁抜きに一晩かかるわよ?いい?」

私は黙ってうなずき、玲子さんはうれしそうに言った。

「もちろん!明日の夕方、清昇くんとくそガキ連れて来るからさ、食べさせてやってくれない?私も。」

「私も!」
思わず便乗して、手を挙げて主張した。

ママは笑顔でうなずいた。
「わかった。私も楽しみ。ちっちゃい頃、よく採りに行ったの。懐かしいわ。」

めんどくさいことを突然頼まれたのに、ママはうれしそうだった。