小夜啼鳥が愛を詠う

「パス!お能は無理!寝てしまうわ。……お義母さん、どうですか?」

あーちゃんが、おばあちゃんに振った。

おばあちゃんは、首を傾げた。

「そうねえ……神戸なら行きたいけど……私に京都は、ちょっと遠くて、しんどいわ。頼之は?」

「……いつ?来年?……ふーん?受験直前やな?まあ、光は大丈夫だろうけど。」

お父さんはそう言ってから、ニヤリと笑った。

「せっかくやし、さっちゃん誘ったら?……行かんゆーたら、俺が行くわ。」

それまで他人事として、全く興味を示さなかった薫がガバッと顔をはじめとする上げて、にぎやかに主張した。

「桜子行くんやったら、俺も行くっ!なあ、光!俺も、連れてってー!」

「……チケットは2枚だよ。それに、薫にはまだ早いよ。」

そう言ったら、薫はムーッと押し黙った。

受験が終わるまで、さっちゃんを遊びに連れ出さないよう注意され、薫はさっちゃん欠乏症らしい。

「桜子かて、受験直前やのに。」

と、不満をあらわにしてる薫を、家族は目を細めて見ていた。





それから、僕は能楽に……正確には、池上宗真氏に興味津々。

とりあえずは、ネットに上がっている関連動画をかたっぱしから見た。

まだまだ若手なので、シテを勤めること自体が少ない。

ほとんどが、彼のお父さんや、師匠筋がシテの舞台で謡っているだけだ。

でも、僕の感じたモノは、勘違いではなかったようだ。

彼の弟子やファンのブログやつぶやきから、僕は確信した。

彼は、自分以外のモノを身体に取り込めるらしい。

まるで憑依したような、とか、天女や亡霊がのりうつったような、とか……やたら、演技力を褒められてる。

まあ、総合的な実力もあるらしいし、顔もいい。

家柄だって、10年以上前に亡くなられたとは言え、人間国宝の孫。

そうだ。

人間国宝さんの舞台なら、映像がけっこう残ってるんじゃないかな。

ネットもだけど、市の図書館や、テレビ局の過去番組視聴サイト……。



翌日、意外なところで見つけることができた。

学校の図書館に、古い伝統芸能のビデオ全集があったのだ。

早速お願いして、見せてもらった。

……やっぱり!