小夜啼鳥が愛を詠う

でも明田さんとは、ついに関係することはなかった。

僕はむしろ、心身共に甘えさせてほしかったけれど、頑固なほどに誠実な明田さんは僕に手を出そうとはしなかった。

明田さんの心には今もなお彩瀬パパが住み着いていた。

たぶん、僕の中に彩瀬パパを見い出すことも多かっただろうに……。

教育者として、明田さんは僕に過去の足枷を課したくなかったそうだ。

そんな明田さんのことを、僕は心から敬愛する。

今もなお、変わらない……。




「遊ぶなとは言わないけど、避妊と性病には気をつけろよ。……男同士は特に……AIDSとか、目も当てられないから。」

僕にそんな苦言を呈したのも、お父さんじゃなくて、明田さんだった。


お父さんは、僕に彩瀬パパにを重ねることが多いらしく、そう言ったことは何も言わない。

ただ、
「さっちゃんには、生半可な気持ちで手を出すなよ。」
と、釘を刺されたぐらいだ。


「……さっちゃんだけ?あーちゃんは、いいの?」

自分でも、悪のりなのか、彩瀬パパが僕にそう言わせてるのか、よくわからない。

でも、そんな僕の軽口にも、お父さんは真面目に答える……苦渋の表情で……。

「無理強いじゃないなら、止められない。」

……おいおいおい。

あのあーちゃんが、今さら……例え、僕に彩瀬パパが憑依したところで、よろめくわけがないだろう。

実の息子の僕の目から見ても、あーちゃんはお父さんに依存しきっている。

お父さんを苦しませるようなこと、するわけない。

……なのに……。

やっぱり僕のなかには、彩瀬パパが存在するのだろうか……。

たまに、無性にあーちゃんを欲しくなる。

八方ふさがりだ。




中学3年生の秋のこと。

新聞社のチャリティー美術展で、不思議なヒトを見かけた。

金髪の、淡い緑の瞳の、綺麗な外国人男性。

一目見ただけで、異質なモノを感じた。

霊的なモノではない。

例えて言うなら……異形のモノ?

そこだけが、まるで強烈に発光してるように見えた。

僕は彼から目を離せなくなった。

かといって、話し掛けることもできないまま、僕はただ、遠くから彼を見ていた。

僕の視線を感じているのかいないのか……彼は、他には目もくれず、ただ一点を見ていた。

微動だにしない彼を、僕は少し距離を置いた真横から見ていた。

キラリキラリと涙が頬を伝っていた。