小夜啼鳥が愛を詠う

その頃、僕らは、周囲にはやし立てられては、無邪気に唇を押し付けるだけのキスをしていた。

まだ幼いさっちゃんは、ただニコニコしていた。

……僕に恋していることは明白だったし、嫌がってる様子もなかったので、そこに何の罪悪感もなかった……。




小学生になる直前の春休み。

久しぶりに再会したさっちゃんに、何の気なしにキスした……ら、小さな薫が僕を思いっきり突き飛ばしてきた。

最初は意味がわからなくて、ただただ驚いた。

薫はやんちゃだけど、暴力的ではない。

そもそもずっと空手を習ってる5つも年上の僕に刃向かうとか、あり得ない。

呆然として薫を見た……ら、薫は思いっきり背伸びして、さっちゃんにしがみついていた。

「……薫くん……?」

さっちゃんも、何が起こったのかわからず、ぽかーんとしていた。

薫だけが目を真っ赤にして、僕を睨んでいた。

……真剣だった。

まだ2歳のくせに、薫は全身で主張していた。

俺のものだ、と。

さくらこは俺のものだ、と。



……そうか。

本気なんだな。

……薫は……さっちゃんのことを……そこまで、好きなのか……。

あーちゃんを……実の母親を僕に独占されても、文句一つ言わないのに……。


……わかったよ。

僕は天を仰ぎ、それから薫に向かって聞いてみた。

「乱暴だな。ちゃんと言葉で言ってごらん。どうして、僕を突き飛ばしたの?」

薫の頬が紅潮した。

……多少、照れてるのか……単に怒ってるだけじゃなさそうだ。

「ごめんっ!でも、光ばっかりずるい!俺も!」

薫はそう言って、さっちゃんにすがりつくように仰ぎ見た。

さっちゃんは、ものすごく困って僕を見た。

その目が、助けを求めていた。


……でも僕は……さっちゃんの望むことは、何も言わないし、何もできなかった。


それどころか、あまりにも前途多難な薫の初恋を、どうしたものか……そればかり考えた。

さっちゃんは、すごくイイ子、とっても優しい子だけど、さすがに今の薫を好きになるのは、ハードルが高すぎるだろう。

せめて、薫が……そうだな……さっちゃんの背丈と並ぶぐらい成長しないと……恋愛対象とはとても見られまい。

……うーん……。