「わかった。」

おじいさまが重々しくそう言った。

そして、薫くんでも、由未さんでもなく、天花寺さんに向かって言った。

「……恭匡くん、すまないね。君にとってはあまりおもしろくない話やろうけど、娘の昔の憧れの先輩ってやつだ。同席してやってくれるか?」

天花寺さんの笑顔は崩れなかった。

むしろ口角が上がり……慇懃無礼……いや……般若……。

怖い~~~。

「もちろんです。僕も楽しみです。」

さぶい……。

何となく見てられなくて、振り返ったら、義人さんと目が合った。

義人さんは片頬だけ上げて、笑って見せた。

……や~……。

この家族、ほんと……大変だわ。

一筋縄でいかないにも程がある。

でも……。

途方に暮れる私の隣で、薫くんはやたら活き活きしていた。

……楽しそうな顔しちゃって。

確かに……薫くんなら……魑魅魍魎の経済界でも互角に渡り合えるのかもしれない。

……ふむ。

頼もしい……って、思っていいのかな?

瞳に強い光を輝かせる薫くんに見とれていると、カメラマンさんが声をかけた。

「そろそろイイですか~?」

「あ!はい!すみませんでした!大丈夫です!」

希和子さんが慌ててそう言った。

「は~い。じゃあ……なんだっけ?……鳥が飛ぶんですっけ?」

カメラマンさんが、由未さんにそう尋ねた。

「あ!」
と、まいらちゃんが叫んだ。

「どうしたの?」

おばあさまに聞かれて、まいらちゃんは椅子から降りて走り出してから返事した。

「家族、1羽忘れてた~!」

「……いざや、か。すみません。もう少しだけ待ってください。」

義人さんがカメラマンさんにそう謝った。


まいらちゃんはすぐに帰ってきた。

胸の前で両手を合わせて、走りにくそう……あ……つまづく……。

「まいらっ!」
「危ないッ!まいらちゃんっ!」

まいらちゃんは、こけないようにバランスを取ろうとして、両手を大きく振った。

手の中から、鳥のいざやくんが放り出される。

……鳥なのに、飛ぶというよりは、飛ばされて来たいざやくんを、薫くんがジャンプしてキャッチした。

「危なっ!……大丈夫け?」

薫くんは、まいらちゃんではなく、手の中のいざやくんに話し掛けた。