小夜啼鳥が愛を詠う

「なんだ。今、帰ったのか。」

おじいさまが天花寺さんと一緒にやって来た。

「あら……あらあらあら。オシャレした家族が勢揃いね。写真、撮りましょうか!」

突然お母さんがそう言い出した。

「……おばあちゃんと私は、普通の格好やで?」

ちょっと不満そうなまいらちゃんに、薫くんが言った。

「そのままでイイと思うけど……着物に着替えるなら、帯、手伝うで?」

まいらちゃんは、ぱああっと笑顔になった。

「あ。じゃあ、私も手伝おうか?……おばあさまも……着られますか?」

おばあさまが返事する前に、おじいさまがつぶやいた。

「久しぶりだな……。」

うれしそうな響きに、おばあさまがふわりとほほ笑んだ。

「……そうですね。では、少し待っててくださいね。」



結局、希和子さんと2人がかりで、おばあさまとまいらちゃんのお着物を着付けた。

おばあさまは、卯の花色のやわらかい縮緬に、洒落た渡文の帯を選ばれた。

まいらちゃんは、写真に映えそうな青地の友禅の振袖。

「帯は立て矢に結んでほしい!」
とリクエストされてしまい、私達には手に負えず……結局、薫くんに結んでもらった。

「立て矢ぁ?……やの字結びのことやな?」

よくわからないけれど、昔と呼称が混乱し誤用されて普及しているらしい。

薫くんは、まいらちゃんの希望通りに結んであげた。

まるで歌舞伎の腰元のように、斜めにリボンを背負っててカワイイ……。

「やの字結びは、嫁入り前の城奉公の娘の結び方やから、桜子はあかんで。」

うらやましく見てると、薫くんがそう釘を刺した。

「……そうなの?……私もおリボンみたいに結んでみたかったな……。」

未練がましくそう言うと、薫くんはその場で私の帯締めを解いた!

え!?

何するの?

そのまま、くるっと半回転。

驚いたけど、あっという間に結び直してくれたようだ。

「すごーい。ホント、上手ねえ。」

おばあさまが感心してる。

「え?どんな感じですか?」

見えない私のために、希和子さんが合わせ鏡で見せてくれた。

「あ……お文庫結び……にしては、ちょっと長め?」

「それもリボンみたいなもんやろ。かわいいで。」

薫くんはさらっとそう言って、私に手を差し出した。

「ほな、行こうか。おじいちゃんらが待ちかねてはるわ。」