御院さんと呼ばれた藤巻くんのお父さんは目を細めてうなずくと、私に向かって深々と頭を下げた。
「愚息がお世話になり、ありがとうございました。」
ぎょっとした。
慌てて私は、手を振った。
「いえ!そんな!私は何も!……あの、私も、小門さん家(ち)の別荘に連れてもらっただけなので、藤巻くんと同じです。」
「いえ。お姉さんは、ずっと一緒に遊んでくれました。それに、お姉さん、玲子さんのお友達やそうです。」
ん?
藤巻くん、実の父親に敬語なの?
偉いなあ。
「玲子さんの。……そうですか。」
御院さんは、優しい微笑みを浮かべて何度もうなずいた。
温かいお人柄なんだろうなあ。
素敵だわ。
「では、こちらへどうぞ。……ところで、清昇、何を持ってるんだ?」
御院さんは藤巻くんの持つ袋を覗き込んだ。
せいしょう、って、藤巻くんの名前?
有職(ゆうそく)読みなのかしら。
「わらび?」
「玲子にわらびご飯炊いてもらうねん!御院さんも一緒に食べる?」
元気いっぱいにそう言った薫くん。
ああ……同い年なのにずいぶんと藤巻くんと違うものだわ。
玲子さんを呼び捨てにした薫くんを、御院さんが呆れないか、私はかなりドキドキした。
御院さんは、首を傾げた。
「おや。彼女をナイチンゲールや、ロシニョールと呼ぶのはやめたんか?詩的で美しくて、私は気に入ってたのに。」
ロシニョール……。
もしかして、ナイチンゲールと同じ意味?
フランス語と英語の違いなのかな?
なーんだ。
あの時、ナイチンゲールの話してたもんね。
そっか。
光くんと薫くんの間で、玲子さんの隠語にしてたんだ。
「仲良しやから、玲子って呼んでいいねん!」
薫くんは明るい笑顔と声で御院さんにそう言ってから、
「なっ!」
と、同意を得るため……というより、誇らしげに私を見た。
……ああ……すみません。
そういうつもりはなかったんですが……ううう。
困ってる私に、御院さんは目を細めた。
優しい瞳だった。
「そうかそうか。……この連休は彼女も忙しかったけど、さすがにもう大丈夫やろ。他の職員の仕事の邪魔せんようにな。」
御院さんはそう言って、薫くんの頭を撫で、息子である藤巻くんの背中を軽く押した。
「藤巻くんのお父さん、素敵な紳士ねー。かっこいい。」
お借りしたスリッパでペタペタ言わせながら、廊下を歩く。
「ジジィやで。薫のお父さんみたいに若くないし、参観日とか恥ずかしいで。」
本当に気恥ずかしそうに藤巻くんはこぼした。
「愚息がお世話になり、ありがとうございました。」
ぎょっとした。
慌てて私は、手を振った。
「いえ!そんな!私は何も!……あの、私も、小門さん家(ち)の別荘に連れてもらっただけなので、藤巻くんと同じです。」
「いえ。お姉さんは、ずっと一緒に遊んでくれました。それに、お姉さん、玲子さんのお友達やそうです。」
ん?
藤巻くん、実の父親に敬語なの?
偉いなあ。
「玲子さんの。……そうですか。」
御院さんは、優しい微笑みを浮かべて何度もうなずいた。
温かいお人柄なんだろうなあ。
素敵だわ。
「では、こちらへどうぞ。……ところで、清昇、何を持ってるんだ?」
御院さんは藤巻くんの持つ袋を覗き込んだ。
せいしょう、って、藤巻くんの名前?
有職(ゆうそく)読みなのかしら。
「わらび?」
「玲子にわらびご飯炊いてもらうねん!御院さんも一緒に食べる?」
元気いっぱいにそう言った薫くん。
ああ……同い年なのにずいぶんと藤巻くんと違うものだわ。
玲子さんを呼び捨てにした薫くんを、御院さんが呆れないか、私はかなりドキドキした。
御院さんは、首を傾げた。
「おや。彼女をナイチンゲールや、ロシニョールと呼ぶのはやめたんか?詩的で美しくて、私は気に入ってたのに。」
ロシニョール……。
もしかして、ナイチンゲールと同じ意味?
フランス語と英語の違いなのかな?
なーんだ。
あの時、ナイチンゲールの話してたもんね。
そっか。
光くんと薫くんの間で、玲子さんの隠語にしてたんだ。
「仲良しやから、玲子って呼んでいいねん!」
薫くんは明るい笑顔と声で御院さんにそう言ってから、
「なっ!」
と、同意を得るため……というより、誇らしげに私を見た。
……ああ……すみません。
そういうつもりはなかったんですが……ううう。
困ってる私に、御院さんは目を細めた。
優しい瞳だった。
「そうかそうか。……この連休は彼女も忙しかったけど、さすがにもう大丈夫やろ。他の職員の仕事の邪魔せんようにな。」
御院さんはそう言って、薫くんの頭を撫で、息子である藤巻くんの背中を軽く押した。
「藤巻くんのお父さん、素敵な紳士ねー。かっこいい。」
お借りしたスリッパでペタペタ言わせながら、廊下を歩く。
「ジジィやで。薫のお父さんみたいに若くないし、参観日とか恥ずかしいで。」
本当に気恥ずかしそうに藤巻くんはこぼした。



