小夜啼鳥が愛を詠う

「そうして!そうしよ!ね?金曜日はそのままココに泊まって?ゆっくりして?……桜子ちゃん、突然、仕事と家事の両立、大変でしょ?週3日だけでも楽するといいわ。」

……会社の隣が自宅なのに、わざわざ郊外のこの家まで寄り道することが、楽だとは思えないんだけど……。

でも……。

それもいいかもしれない。

たぶん、私……どんなにおじいさまやおばあさまに「また遊びに来て」って言われても、自分からは絶対に行けないもん。

こんな風に、多少強引でも、お膳立てしてもらえないと、いつまでたっても仲良く行き来することなんてできない。

……たぶんそれがわかってるから、薫くんは引き受けてくれたんだろうな。

私は観念して、うなずいた。

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

そう言ったら、おばあさまの瞳が潤んだ。

おばあさまが両手を伸ばす。

え……。

私も手を出して、おばあさまの手を取ったほうがいいのだろうか。

どうしよう……。

戸惑ってると、トン!……と、背後から薫くんに、優しいけれどしっかりめに押された。

バランスをくずすほどに前のめりになった私を、おばあさまが支えるように抱き留めてくださった。

……細っ!!!

おばあさまの腕も胴回りも、骨が……すごい……。

そういえば、食事をできなくったので抗癌剤治療を断念したって聞いたけど……今も、おつらいのかな……。

何だか……泣けてきた……。

こんなに痛々しいほど痩せてらっしゃるのに……私を支えてくださるお気持ちが……尊い……。

おばあさまの手が、いつの間にか私の背中を撫でてくださっていた。

小さい子をあやすような優しい温もりがうれしくて……気恥ずかしくて……。

ぐずぐずと盛大に鼻水をすする音。

顔を上げると、薫くんが……由未さんが……まいらちゃんまで!

みんなが目を赤くしていた。

……何も泣かなくても……とも思ったけど……よくよく考えてみたら、おばあさまが、それだけ想ってくださってたってことなのかな。

どうしよう。

私……幸せだ……。

いや、もちろん、自分が不幸だとは、今までも思ってなかった。

パパ以外の父親がいると知った時は、さすがにショックだったけど……パパとママの愛情はまったく揺るがないってわかってたから……自分が不幸とは感じなかった。

本当の父親が義人さんだとわかった時は、不幸どころか恋しかったし……捨てられたとかネガティブには思わなかったしなあ。