小夜啼鳥が愛を詠う

……孫……。

孫って、言った……。

いや、その前に私が「おばあさま」って呼んでるわけだけど……くすぐったいような……照れくさいような……。


「あ。鳥。」

薫くんが指差した。

既に飛び立った野鳥ではなく、おばあさまの手の中に、小さな青い鳥……。

セキセイインコ?

「あ……ええ、孫のまいらのペットなんよ。」

おばあさまがそっと手を開くと、青い丸い鳥は、くちゅくちゅと変な鳴きかたをして……言葉らしきことを話し始めた。

「イザヤ、カワイイ。イザヤ、カシコイ。イザヤ、オチタ。」

壊れたラジオのように、ガーガーピーピーと変な雑音を交えて、確かにそんな風に話した!

「しゃべっとる!いざや?落ちた?」

薫くんがズイッと、鳥に顔を近づけた。

青い鳥は、びっくりしたらしく、少しだけ飛び上がって、そのまま地面にべちゃっと落ちてしまった。

大変!

「うわっ!大丈夫け!?……あれ?……こいつ……雛ってわけじゃないんですか?病気?」

「ええ。うちに来てもう丸2年だけど、オトナになれてへんみたい。……脚が悪くて……踏ん張れないし、飛んでも普通に着地できひんのよ。……いざや。いらっしゃい。」

おばあさまは膝を折ってかがみ、ぺちゃっと半分羽根を広げたまま床に落ちた青い鳥に手を差し伸べた。

いざやと呼ばれた青い鳥は、ちょこちょこと不器用に歩いて、おばあさまの手に乗った。

……めっちゃかわいい……。

あ、でも確かに……爪がないし、足の指も短くて丸い?


「いざや?……いざやいざや見に行かん?」

薫くんは、「さくらさくら」の最後のフレーズの歌詞を挙げた。

「預言者イザヤって聞いたけど。」

由未さんがそう教えてくれた。

「そうなのよ。希和ちゃんがね、妊娠がわかった時に、聖書のイザヤ書と、あと、イザナギノミコトから『いざや』って名前を付けたいって言い出してね……男の子だったら、『まいら』ちゃんは、『いざや』くんになってたわね。」

苦笑するおばあさまの言葉に青い鳥が反応した。

「マイラ!イザヤ……。ガーガー……マイラ!マイラ!マイラチャン!マイラ!」

……おもしろい。

青い鳥は、ガーガーとラジオのチューニングのように鳴いたあと、声色を変えてまいらちゃんを呼んだ。

最初のテノールが義人さん、次のメゾソプラノが希和子さん、そしてソプラノでちゃん付けしたのがおばあさま、最後の低い声はおじいさまだろう。