小夜啼鳥が愛を詠う

「レモンの木やねえ。」

由未さんが、鉢植えの木の葉に触りながら首を傾げた。

「……義人さんが……レモンの木を育てることを勧めてくださってたので、たぶん、持たせてくださるつもりなのだと思います。」

そう言って、私もレモンの葉に触れてみた。

……常緑樹なんだ。

けっこう大きいな。

すぐ花が咲くんだろうな……。

何だか、わくわくしてきた。

そばに居ても、居なくても……義人さんの心を感じると、心が温かくなれるみたい。


「たぶん、お庭にいると思う。お母さん。……真冬と真夏以外はお庭が好きで……。」

そう言って、由未さんが案内してくれたのは、先ほどの庭園とは趣の違うお庭だった。

イングリッシュガーデンの日本版みたいな感じ?

ふわりと優しい香りが、風に乗ってやってきた。

草花の香り……。

柔らかい木漏れ日の中に、ぽつんと1人のヒトが座っている背中が見えた。

鳥が……小ぶりな黒っぽい野鳥かな?……彼女の肩や膝を行き来して、たぶん餌をもらっているようだ。

優しい光景だった……。

「……由未?」

優しい声。

「うん。ただいまー。お待ちかねの、桜子ちゃん、連れてきた。薫くんも。」

由未さんの言葉が終わらないうちに、栗色に髪を染めた、見るからに優しそうな老婦人が私を見つけ出した。

「……桜子ちゃん?」

おばあさまの瞳にみるみる涙が溜まる。

あ……。

思い出した。

確かに、知ってる……。

私、このヒトにお会いしたことある……。

「おばあさま……。そうでしたか……。思い出しました。薫くんのお話を熱心に聞いてくださってた……。」

そうだ。

見知らぬ子ども達に怯える光くんをなだめる私を、遊ぼう遊ぼうとまとわりついて騒ぎ立てる薫くんに……手をさしのべて、お菓子とジュースでご機嫌取っておとなしくさせてくれてた……。

「俺も、覚えてる。お久しぶりです。小門薫です。」

薫くんはビシッと立って、深々と頭を下げてそうご挨拶した。

おばあさまは涙目でほほえんだ。

「立派になって……。おめでとう。桜子ちゃんが薫くんと結婚したって聞いて、すごくうれしかったわ。ありがとう。薫くん。これからも、……孫を大切にしてあげてぇね。」