小夜啼鳥が愛を詠う

「あ。桜子。……ほら。昨日の玲子のお点前と、ちょこちょこ違っておもしろいわ。」

薫くんはそう言って、振袖の女性が運んできてくれたお茶碗を受け取った。

続いて、私もお菓子とお抹茶をいただいた。

……うん。

美味しい。

けど、やっぱり天花寺さんのお茶ほどの感動はない気がした。


お琴の演奏が終わり、お三味線のかたがたが音を奏で始めた。

「芳澤の咲弥くんと菊乃ちゃんが、最後に舞うみたい。それ、観てから行こうか。」

由未さんの言葉通り、桜の園遊会を締めたのは美しい雄蝶雌蝶の舞いだった。

美しい和化粧を施し、華やかな衣装を着てるのに、派手さより優雅さの際立つ舞い姿が素敵だった。

日本舞踊ってもっとクネクネしてると思ってた。

お能の仕舞ほど、もちろんしゃちほこばってはいないけど……2人の舞は、ひたすら上品だった……。


「……じゃあ、そろそろ行こうか。」

閉園の案内のアナウンスが流れ、お客さんが帰って行くのを待って、由未さんが立ち上がった。

既にお点前するヒトもいない。

わざわざ立ち上がって風呂釜や茶道具を丹念に見ていた薫くんが慌ててこっちに戻って来た。

「僕は、少しお酒をいただいてくよ。」

酔っ払いエリアもお開きだろうに、天花寺さんは鷹揚にそう言った。


解放された桜園エリアを抜け出すと、喧騒が嘘のように静かだった。

それにしても大きな庭園。

小高い丘まであって、まるで自然公園だ。

お城のような自宅もすごいし……別世界だわ。

「温泉もあるよ。私も実家に来ると必ず入って帰るねんわ。……桜子ちゃん、ゆっくりしていけるんでしょ?あとで一緒に入ろうか?」

……裸のつきあいかしら。

「素敵ですね。温泉まであるんですか。」

何かもう、すごすぎて……。


「ただいまー。……あれ?これ、何やろ。すごい荷物。」

広すぎる玄関ホールには、いくつもの紙袋や、プレゼントのようなものが積み上げてあった。

……もしかして……これ……私に準備してくださってるというお土産だろうか。

確かに、電車で運べる量じゃないけど……車のトランクだっていっぱいになるよ。

多すぎるよー!

「鉢植え?」

薫くんのつぶやきに、確信した。

間違いない。