小夜啼鳥が愛を詠う

「お願いします。……薫くん、呼びますね。」

そう言って、バッグからスマホを取り出した。

けど、由未さんは、すっくと立ち上がった。

「私たちも、野点でお茶を飲んでからにしよっか。行こう。」

「はい!」

何となく、由未さんの顔色がさっきより良くなっている気がした。

少し休んで落ち着かれたのかな。

よくわからないけど……心持ち歩みをゆっくりにしてみた。

由未さんは、途中で気づいたらしく、ちょっと会釈してくれたけれど……少し淋しそうな笑顔に感じた。

気を遣い過ぎても傷つけちゃうのかな。

難しいな……。


野点エリアでは、優雅にお琴まで演奏されていた。

「今年の野点は、宗和の若宗匠が取り仕切ってくださってるのねえ……。」

由未さんのつぶやきに、私は首を傾げた。

「……毎年、違う流派のかたがお点前されてるんですか?」

「うん。お付き合いが大変みたい。……父も母も兄も私も希和ちゃんも、それぞれ違う流派でお稽古したからねえ。……まいらちゃんはどうするのかしらねえ。」

「意外と……みなさん、自由なんですね。」

普通は、同じ流派を選ぶだろうに……。

「うん。父は会社ではワンマンだけどねー、昔は家庭に見向きもしなかったから。希和ちゃんが来てからは、マイホームパパに変貌して、今や激甘じいじだけど。」

「……そうなんですか。」

とりあえず、義人さんとおじいさま以外は、仲良し家族……なのかしら。

「ほら、今、お茶を主人に運んでくださってるのが若宗匠。」

由未さんの言葉に顔を上げると、なるほど、天花寺さんの前に和服の男性がいらして、歓談してるようだ。

薫くんは……目をキラキラさせて、お点前を見てる。

そんなにも興味があるのかぁ。

おもしろいなあ。

光くんもお能に傾倒してたし……、兄弟揃って和の文化好きなのは……やっぱり、おばあちゃんの影響なのかな。

お茶やお菓子を運んでらっしゃる人たちの邪魔にならないように、後ろから薫くんたちの床几に近づいた。

由未さんが若宗匠にご挨拶されてるのに、一緒に会釈だけして、薫くんの隣に腰を下ろした。

「興味津々ね。」

そう声をかけると、薫くんはハッとしたように私を見た。