小夜啼鳥が愛を詠う

「うん。知ってる。中学の時、お世話になってん。保健室の先生。一緒にインターハイのお手伝いもしたし。……一見クールビューティーやけど、すごーく優しい先生で……お兄ちゃんとできてるって知って複雑な心境やったけど……桜子ちゃんを産んで、育ててくださって……またご恩が増えたなぁ。今度、会いに行ってこようかな。」

……意外と、けっこう知ってるっぽい由未さんに驚いた。

それに、私の存在を、疎ましく思うどころか、喜んでくださってる……。

優しいヒト……。

「そうでしたか。逆に私は、母の過去を何も知らないんです。……こちらとのご縁も……昨年、教えられました。」

苦笑してそう言うと、由未さんは驚いたらしい。

「えー!そうなん?……あおいちゃんと頼之さんは、桜子ちゃんが生まれる前から何となく知ってたみたい。……父が古城さんのお店に出入りしてたから。……てっきり、桜子ちゃんも知ってたと思ってた……。」

……えー……。

知らない知らない!

てか、みんな……そんな重大なこと、ずっと何も言わないって……。

「……光くんや薫くんも、既に知ってて……私だけが知らなかったんですね。」

しょんぼりそう呟いた。

「あー。……めっちゃ大事にされてたんやねえ、桜子ちゃん。みんな、みじんも傷つけたくなかったんやね。」

由未さんは苦笑して、そう言ってくれた。

真偽のほどはともかく、由未さんの心遣いがうれしかった。

泣きそう……。

「……まいらちゃんにも逢ってるのよね?」

由未さんにそう聞かれて、私はうなずいた。

「去年、友人の結婚式でご一緒しました。……今日も会えるかと楽しみにしてたんですけど……。」

「あー。こっちには来ないかな。お酒飲んで酔ってるヒトもいっぱいいるからねえ。家にいると思う。……まだ……母にも会ってないのよね?」

ちょっとドキッとした。

……今日の本来の目的は……おばあさまにご挨拶することだったっけ。

「はい。……どなたかが呼びに来てくださるのかなあ……と……。」

まさか、自分で訪ねて行くなんて……できるわけないし。

「なるほど。……あ。じゃあ、一緒に行く?」

由未さんの提案に、一瞬固まったけど、気を取り直してうなずいた。

どうせそのつもりで来たんだもん。