小夜啼鳥が愛を詠う

開き直って、まるで睨み付けるように、おじいさまを見た。

おじいさまは、にんまり笑って、それから慌てて表情を引き締めた。

……あ。

何だか、すごーく……やばいかも。

たぶん、おじいさまは正しく理解してしまった気がする。

私を動かすのに、薫くんを引っ張るのが効果的だということに。


「あー、薫くん。社会勉強に、アルバイトしてみないか?」

出た!

早っ!

さすがワンマン社長。

あっという間に、薫くんを懐柔して取り込むつもりだ。

でも薫くんは、即答はしなかった。

「ありがとうございます。大学が始まって、時間割が決まったら、是非お願いします。……ただ、一回生の間は、講義が詰まってるらしいので、来年になるかもしれません。」

……いや、教職とか取らないなら、普通に時間はあると思うよ?

とは思ったけど、そのへんの判断は薫くんに任せるつもり。

おじいさまは、意外と喰えない薫くんに興味を持ったらしい。

その後も、たわいもない質問を薫くんに投げかけ、ご満悦で去って行った。


やっと芦沢さんからココナッツとグレープフルーツを受け取れたら、ホッとして一気に飲み干しちゃった。

「……すげーな。おじいちゃん。カリスマオーラにひれ伏したくなった。俺、あのおじいちゃん、好きやわ。」

薫くんは、ココナッツジュースで喉を潤すと、嬉々としてそう言った。

まだ近くにいた芦沢さんが驚いたように振り返って薫くんを二度見していた……。

「薫くん、大物だわ。……ほんと、頼もしい。」

苦笑まじりになったけど、本当にそう思うよ。

薫くん、すごーい!って。

「そうけ?ココナッツ飲む?」

何の照れ隠しか、薫くんは椰子の実を持ったまま、私の口元にストローを近づけてくれた。

「飲む。」

思ったよりサッパリスッキリした、青臭さが爽やかなココナッツジュースだった。


「……新婚さんだー。仲良しだー。さくら女が甘えてるー。」

不意に、私をはやし立てる声。

野木さんだ!

パッと振り返ると、そこには確かに野木さんがいた。

いたんだけど……あれれれれ?

「野木さん……おめでた?」

お顔はあまり変わってないんだけど……胴回りが、まるで別人のように膨らんでる。