小夜啼鳥が愛を詠う

「……薫くんだって……生まれる前から、家族に愛されてたよ……。覚えてるもん。光くんなんか、六甲にいても、大騒ぎしたもん。」

張り合うようにそう言ったけれど、身体は薫くんにぴったりと寄り添った。

大好き……と、伝えたくって。

「俺らも……授かるの、楽しみやな。」

薫くんはそう言ってから、ふと気づいたように続けた。

「でも桜子、ちょっと生理不順?痩せすぎ?ストレス?」

「……生活環境変わったからかも。……てか、そんな話、恥ずかしいんだけど。」

こんなとこで、それもこんなに夢々しい桜の園で、そんな血生臭い話やめてー。

困ってると、斜め後ろから咳払い。

振り返ると、おじいさまと原さん、そしてさらにやや後方に、両手にココナッツとグレープフルーツを持った芦沢さんがいた。

「小門薫くん?……はは、お父君によく似てはるわ。はじめまして。竹原です。よく来てくれはったね。」

おじいさまは、笑顔を貼り付けてそう挨拶した。

……聞かれてた?……よね?

薫くんは、背筋を伸ばしてから、お辞儀した。

「はい!小門薫です。はじめてお目にかかります!ご挨拶が遅れましたが、先月、桜子さんと結婚させていただきました。今後よろしくお願いします。」

……つい今し方、生理不順云々言ってたその口で、よく言うわ……。

ちょっと呆れたけど、薫くんの如何にも体育会系爽やかオーラをギラギラ発光させた態度は、おじいさまのお眼鏡に適ったらしい。

「ふむ……。頼もしい好青年じゃないか。桜子。」

笑顔のおじいさまに、薫くんもにぱっと笑顔になった。

「ありがとうございます!でも、ずっとサッカーしかしてこなかったサッカー馬鹿なんです、俺。これから、貪欲にいろんなことに挑戦して、本当に、頼もしい男になれるよう頑張ります。できたら、おじいちゃんにも、厳しく指導してもらえたら勉強になります。」

……生理不順云々もふっ飛ぶ薫くんの挨拶だった。

てか!

おじいさまのことをおじいちゃん、ってゆったー!

びっくりした!

でも、おじいさまは、もの言いたげに私を見た。

なんか……期待されてる……。

私にも、おじいちゃんと呼んでほしいんだろうか。

……努力はします。

「主人ともども、孫だと思って甘やかさず、厳しめにご指導していただけたら、うれしいです。……おじい……ちゃ、ま。」

……努力は、した。

頑張った。

でも、これが今の限界。

ごめん!