小夜啼鳥が愛を詠う

「ココナッツですね。……桜子さんもいかがですか?パイナップルやグレープフルーツ、オレンジなんかも、同じように果実を丸ごとジュースにしてるようですが。」

「パイナップル?……重そうですね。じゃあ、グレープフルーツをお願いします。」

「では、桜を観てらしてください。すぐお届けします。」

芦沢さんにそう言われて、私たちは誘導にしたがって桜の園へ足を踏み入れた。

遠くから観ると、桜の森のように思えた。

けれど、近づくと、そこはかなり計算されて造園された桜のお庭だった。

無数の大きなしだれ桜がまるで天井のように空を覆う。

その中に、いろんな種類の桜の木が絶妙なバランスで植え付けてある。

そして真ん中には、かすかに色づいたしだれ桜が、風にゆらゆらと揺れていた。

あ……。

やっと、何となく、既視感。

私、ココに来たことある。

今さらだけど……これだ。

夢の中でも何度も見た、桜の園。

そっか……。

本当に私、昔、ココに来てる。

光くんと、薫くんと……見知らぬ子ども達と……。


「あれや。桜子の木。絶対に、あれや。」

薫くんは確信に満ちた瞳でそう断言した。

「真ん中のしだれ桜?……なんで?」

そう尋ねると、薫くんは私の手をきゅっと握った。

「前にお義母さんに聞いたことある。大きなピンクの森の中に、小ぶりやけど綺麗な樹形のしだれ桜があるって。いかにも周囲に大切に守られ、かしずかれて、育てられてる、って。……たぶん、桜子のことやろ?」

……かしずかれ?

「まあ……大事にはしてもらってるけど……私?」

改めて、その桜の木を見つめた。

切り詰められることも、矯正されることもなく、伸び伸びと枝を伸ばし、地面につくほどに長く垂れ下がった枝には優しい色の花が満開。

……義人さんがママを重ねたというあの白い孤高の桜と、なんて対照的なんだろう。

どちらも美しいけど……この桜は、甘やかされて、愛されて、幸せそうで……。

「生まれる前から愛されてたって、よぉわかるわ。」

しみじみと薫くんがつぶやいた。

涙がこみ上げてきた。