小夜啼鳥が愛を詠う

翌日は、早めに起きて身支度を始めた。

「……これ、着るん?地味ちゃう?何色ってゆーの?」

衣紋掛けの色留袖を見て、薫くんが首を傾げた。

「鳥の子色だって。……うーん。でも、これ、格が高いんだって。かなり本格的な園遊会らしいし、……はじめて、おばあさまに逢うから……」

そう言ったら、薫くんはゴソゴソと和箪笥を探った。

「じゃあ、帯はコレにしよう。唐織?能衣装と同じやろ?コレ。」

……はい、そうです。

超有名織り元の逸品です。

さすが薫くん……目が肥えてるわ。

「じゃあ、それで。お願いします。」

言うまでもなく、男師さんのように、薫くんは帯を折って準備し始めた。

「素早い!ちょっと待ってね。これ、襟が比翼で……。」

「見せて。」

いつの間にか、薫くんは襟やおはしょりも上手になっていた。

……もう、すべてお任せしちゃいたいかも。

ヘアメークは仕方ないけど。



一歩先に外に出た薫くんが、すぐ戻ってきた。

「……今日けっこう暑いわ。桜子、日傘いるわ。」

「えー。めんどくさいし、いいよ。」

荷物をあまり持ちたくなくて、私は拒んだ。

けど
「ほな俺が持つわ。」
と、薫くんは、ニコニコ。

……日傘を差し掛けてくれるってこと?

さすがにそれは……恥ずかしいかも。

「自分で持つ……。」

そう言ったけど、薫くんは相合い傘のように私を抱き寄せて日傘を差し掛けてくれるつもりらしい。

……あま~~~い。

「時間かかってもバス2本乗り継ぎで行けるんちゃう?」

エレベーターの中で薫くんはそう言ったけど、私はぶるぶる首を横に振った。

「道、絶対こんでるから電車のほうがいい。よりによって嵐山よ?嵐電か阪急がいいって。」

「……電車もこんでる思うで。」

「う……。そうかも……。」

まあ……しょうがないね……。

覚悟して行こう!

と、勢い込んで出てきたら、マンションの前に……というよりは、本社の前に目を引く高級車が停まっていて……。

「あ……義人さん!……と、希和子さんだ。」

「……ほんまや。……うわぁ、お兄さんがおっさんになってる……。」

「ちょ!……薫くん、お願いだから、今日は、言葉遣い、気をつけてね。」

「わかってるって。」