小夜啼鳥が愛を詠う

「あ。あった。あれ。」
藤巻くんがすぐそばの斜面を指さした。

そこには若草色のぬーっとした茎。
先端は、くるりと丸まっている。

「ふーん。これがわらびなんだ。わかった。探してみる。」
「探さんでも、これ、全部そうやろ!ほら!これも!でかっ!」

薫くんが嬉々として斜面を這うように登り、ぶちぶちと手当たり次第、それっぽい緑の長い茎を折り採った。

「でかすぎるって!薫!ストップ!あかんあかん!育ち過ぎたらかたくてうまくないから。これぐらいが、ギリギリ。わかる?」

慌てて藤巻くんが薫くんを止めた。

なるほど。

藤巻くんが最初に採って見せてくれたわらびは、上部がくるんと丸まっていた。
そして、ギリギリOKというわらびの上部は、丸まっていた部分が伸びて3つに分かれているけれど、そのいずれもがやはり丸まっていた。

それに対して薫くんが折ったわらびは、3つに分かれたそれぞれが大きく伸びてシダ類っぽい葉っぱがハッキリわかった。

「わかったー。じゃあ……あ。これなんか、いいんじゃない?」
私は、少し先に生えていたのをポキッと折った。

太くてあまり伸びてないので柔らかそうだと思った。

でも、藤巻くんは苦笑した。
「それ、ぜんまい。わらびちゃうわ。」

えっ!
違うの?

「どこが違うの?……うーん、くるっと丸まってる部分が大きい?」
「色も違うやん。桜子の持ってるの、黒いで。藤やんのは、緑。……あ、これ!」
薫くんが少し藪にはいって、折り採ってきた。

「どや!?緑で、太くて、くるくるや!」
まさに「どや顔」で、薫くんが藤巻くんに見せた。

「残念。これは、こごみ。わらびは、……ほら、これ。」
藤巻くんが、やはり斜面から一本のわらびを折り採った。

なるほど。

こうして比較してみると、確かにぜんまいやこごみとは違う。

「わかった!桜子、どっちがたくさん採るか、競争や!」
「え!無理!薫くんに勝てる気しない!それに、怖いから一緒に行く!」

端(はな)っから争う気のない私はあっさり降参。

薫くんは脱力して、それからちょっと笑った。

「しやーれへんなぁ。まあ、でも、そやな。桜子やもんな。……ごめんごめん。一緒にいよ。」

そして、いつものように、薫くんは私の手を取った。

「……薫、えらそう。」
ボソッと藤巻くんがこぼしたけど、私は気にならなかった。

言葉や態度は、尊大で、私を見下してるようにとられるかもしれない。

でもそうじゃない。