小夜啼鳥が愛を詠う

「ん~。飲みにくいけど、好き。いっそ、スプーンですくって食べたい。」

そう返事したら、希和子さんが驚いたように私を見た。

「……発想が……新鮮……。」

「え……。なんか……変でした……?」

恐る恐るそう聞いたら、希和子さんは首を横に振った。

「いいと思う。……自由で。」

……うーん……京都人的なイケズではないみたい?

まあ、いいか。


「すげぇ。藤やん。歯ぁ、緑!」

薫くんが、藤巻くんの口を見て笑った。

「薫もな。」

藤巻くんにそう返されて、薫くんは私に、いー!と歯を見せた。

「……うん。緑。」

思わず、自分の口元は両手で隠して、薫くんに言った。

「えー。おもろい。桜子、鏡ないん?」

薫くんは自分の緑に染まった歯も見たいらしい。

「えーと、廊下に……」

「いいやん。来週で。……一緒に習うんやろ?」

藤巻くんが薫くんにそう確認した。

「そやな。ほな来週。……道具、買うて帰ろ。」

……薫くん、ノリノリ。

まあ、よかった。



帰宅しても薫くんは終始ご機嫌だった。

「そんなに楽しみなの?……もともと、興味あったの?茶道に。」

「いや?別に。でも、桜子と一緒に何か始めるのって……はじめてちゃう?うれしいやん。藤やんとも玲子とも逢えるし。」

薫くんはそう言って、私を抱き寄せた。

ふわりと、薫くんのイイ香りが私を包む……。

「これから、いろんなことしような。習い事だけじゃなくて。人生の『はじめて』を、いっぱい桜子と共有するねん。」

……なるほど。

どうしても5つも年齢差があると、たいていのことは私が先に体験してるもんね。

「そうね。私も、うれしい。」

同意すると、薫くんは愛しげにキスしてくれた。

「ほんまは……桜子とつきあい始めた時……そうしたかった。」

「……そう?」

意味がわからず、聞き返した。

「うん。桜子といろんなこと、したかった。でも、俺はずっとサッカーしとって、引退したらすぐ受験で……ごめんな。ずっと待たせて。」

薫くんは真剣に謝ってくれているようだ。

……そんな風に、ちゃんと私のこと、考えてくれてたんだ……。

うれしいな。

「全然。これから50年以上一緒に生きるんだもん。1つずつゆっくり『はじめて』を経験していけばいいよ。」

そう言ったら、薫くんはまた優しいキスをくれた。

こんなたわいもないやり取りが、本当に幸せで……。

「とりあえず、2人の生活をめいっぱい楽しもう。」

そう言って、薫くんに身を委ねた。