小夜啼鳥が愛を詠う

「土間なのに拭くんですか?草鞋の裏って……。」

驚いて、希和子さんに確認した。

「そうなの。お茶は、お茶を点てる技術や作法を学ぶんじゃなくて、お客様をおもてなしする心を養うんですって。だから粗相がないように、ひたすら準備するんだけど……それでも、当日、何らかの不細工な事態に陥ってしまうのよねえ。だから、どれだけ確認しても、足りないの。」

希和子さんはため息混じりにそう嘆いた。

「……地味な作業ですね……。お茶会ってもっと華やかなイメージしかありませんでした。」

私がそう言うと、希和子さんはうなずいた。

「ええ。……私も、お手伝いするまで知らなかったけど……お茶会も、法要も、裏側は地味な作業しかないわねえ。……おもしろくないけど……本当に手伝ってくれるの?」

私は、笑顔でうなずいた。

「地味な作業には慣れてます。むしろ、好きです。……知らないことばかりなので、イロイロ教えてくださいね。」

「OK!でも今日はお客様でいいわよ。希和ちゃん、お正客ね。次客、さっちゃん。で、薫くん。お詰めは、清昇くん。」

わけがわからないまま、玲子さんの指示通り、順番に茶室に入った。

「お菓子は桜餅。葉っぱも食べなさいよ。」

玲子さんにそう言われて、薫くんは嫌そうな顔になった。

薔薇味とかさくら味とか、あまり好きじゃないのよね……薫くん。


噂のお濃茶は、本当に濃かった。

茶杓に3杯のお抹茶が1人分?

4人だから、12杯のお抹茶……ひいぃ!

最初にお茶碗を取って来られた希和子さんは、早口で説明しながら飲んで、お茶碗を拭いて、私に回してくれた。

……最後の藤巻くんが飲む時に冷めちゃうので、急いでるらしい。

私も見よう見まねで、口を付けた。

飲もうとしても、どろりとした液体は、なかなか降りてこない。

やっと到達した……うわぁ。

この食感っていったい……。

かなり濃い~。

苦いと言えば苦いんだけど……でも、甘みのほうを強く感じる。

すっごく不思議。

余韻に首を傾げながら、急いで口を付けた縁を準備したお懐紙で拭いて、薫くんに回した。

「……どうだった?」

玲子さんが尋ねた。