小夜啼鳥が愛を詠う

……そうなんだ。

いつの間にか、見込まれていたんだ……。

でもたぶん、希和子さんの立場としては、微妙な気持ちだったろうなあ。

私も、正直なところ、複雑な気持ちはある。

でも、このヒトが笑顔じゃないと、義人さんは幸せじゃないのよね。

……私は……義人さんがいつも幸せでいてほしい。


「あー、なんか、明日もこっちのお手伝いに来るほうがイイ気がしてきた。園遊会やめとこうかな。」

そうこぼしたら、希和子さんが慌てて顔を上げた。

「ダメ!お母さんが、桜子ちゃんに逢えるの、楽しみにしてらっしゃるから!お願い。顔を見せてあげて。」

「……はい。」

気合いに負けた……。

今の言葉と態度だけで、希和子さんが竹原のおばあさまをどれだけ愛してるかがわかる気がした。

……あったかい、優しいヒトなんだろうな。

「明日は、家元の社中がいっぱい来るから大丈夫よ。……さ。それじゃ、そろそろ行こうか。さっちゃん。飲みたいだけ飲ましたげる。お濃茶でもお薄でも、おかわりして!」

拭き終えたお道具を箱におさめてから、玲子さんがそう言った。

「えー。眠れなくなっちゃうよぉ?……あ、でも、お濃茶?飲んでみたい。ドロドロのやつ。」

「私も。濃いーの、お願いします。ご一緒にいただきましょう。」

希和子さんが笑顔で私にそう言ってくれた。

「はい。……あ、でも、私、はじめてなんです。お作法、教えてください。」

私も自然に笑顔になれた。


噂の非公開国宝の建物は、想像以上に美麗だった。

まさか、外側にも金箔キラキラの装飾があるとは思わなかった。

でも、もともと仏教寺院って極彩色のキンキラキンだもんね。


「桜子ー!!!」

金箔で縁取られた格子窓から手と顔を半分出して、薫くんが叫んだ。

……こんなとこでまで……薫くん……恥ずかしいよぉ。

「……しぃっ。薫くん!お行儀よくして……。」

慌ててそうお願いした。

「すごい……。15年前とノリが変わってはらへん……。」

希和子さんが、呆れてる……というよりは、感心していた。

「掃除したよ。畳も柱も床も拭いた。あとは?」

藤巻くんが玲子さんに尋ねた。

「土間も。箒ではくだけじゃダメ。拭くの。お客様用の草鞋も。裏もしっかり拭いて。」

……え……。