小夜啼鳥が愛を詠う

素朴な疑問だった。

でも、玲子さんの眉がぴくりと上がり、希和子さんは……瞳に涙を溜めた。

あ、やばい。
泣かせちゃう。

「今、ゴタゴタしてるの。お寺の内部。……希和ちゃんが何かすると、猊下がやり玉に上げられるの。だから、無理。」

玲子さんが代わりにそう答えてくれた。

希和子さんはそっと目尻を指ではらって、また黙々とお道具を拭き続けた。

……うーん……。

いじらしい、不憫……なんだけど……要領悪いというか……なんとかならないかなあ。


ちらりと、玲子さんを見る。

玲子さんは、気遣わしげに希和子さんを見ていた。


……まあ……ほっとけないかぁ。

たぶん部活で忙しいだろうに、藤巻くんがお寺のお仕事にも熱心なのも……同じことなのかな。
うー……。


ま……いっか。

藤巻くんもいるし、薫くんも侠気(おとこぎ)あるし……文句は言わないだろう。


私は、思い切って言ってみた。

「それじゃ、お寺と関係ない私がお手伝いするには何の問題もないですよね?平日は無理ですが、土日は何でもおっしゃってください。……あ。平日でも、主人はお手伝いできると思います。」

希和子さんは目を見開いた。

みるみるうちに、涙が溢れ、白い頬を伝い落ちた。

……泣いちゃった。

ごめーん、義人さん。
大事な奥さま、泣かしちゃったよぉ。

やっぱり僭越だったかなあ。

オロオロして、玲子さんに救いを求める。

玲子さんは、震える希和子さんの肩を抱いてなだめた。

「……ごめんなさい。びっくりさせて。……ありがとう。」

しばらくすると落ち着いたらしく、希和子さんが私に頭を下げた。

「いえいえ。そんな。なんか、急に、すみません。唐突でしたよね。」

言いようがなくて、そんな風に言ってみたら、希和子さんは首を横に振った。

「高子(たかいこ)さまが……」

へ?

幽霊の高子さま?

あ……、希和子さんも、見えるヒトなのかな。

「さっき、『いらっしゃい』と言ってもらったそうよ。さっちゃん。やっぱり歓迎されてるのね。」

玲子さんがそう言うと、希和子さんはこっくりとうなずいた。

「高子さまも、孝義くんも、桜子ちゃんは心強いお友達になれるって、ずいぶん前から言ってたの……。まさか本当に……。」

ホロホロと涙がこぼれ落ちる。