小夜啼鳥が愛を詠う

姑って、おばあさま……?

「高校を卒業して、すぐに結婚したの。まいらを産んだのは一回生のとき。……休学すればよかったのに、家族の好意に甘えて……母親の役割を何ひとつ果たさないまま……。」

希和子さんの瞳に涙が浮かんだ。

……うわぁ。
悲劇のヒロインだ……。

なるほど、野木さんが愚痴ってたわけだわ。

「桜子ちゃん、ご結婚しはったんですよね?……会社との両立、できないと思わはったら、迷わずお子さんを優先しはったほうがいいですよ。……一生後悔することになるかも。」

希和子さんにそう言われて、私は思わず口答えしてしまった。

「一生って!!そんな、今からでも全然、関係修復できますよ。実の親子じゃないですか!」

……しまった……と思った時は、後の祭り。

これって、義人さんと私が既に仲良し親子でーす、って言ってるようなもんじゃない?

あああああ。

何かもう、墓穴掘りまくりだよぉ。

「うん。そう思う。成之と頼之くんも、うまくやってんでしょー?大丈夫大丈夫。希和ちゃん、考え過ぎ。負い目に感じ過ぎ。……やっぱり今日は私に任せて、ココに来ないで、まいらちゃんと遊びに行けばよかったんじゃない?」

玲子さんがそう言うと、希和子さんはますます萎れてしまった。

……うーん。
なるほどなあ。

義人さんだけじゃなく、坂巻さんや春秋先生が庇護欲をかき立てられたのわかる気がする。

確かに、ほっとけないかも。


「逆でいいんじゃないですか?まいらちゃん、もう、中学生ですよね?むしろ、こっちに巻き込んじゃえば?私たちも、これから新たにお茶を習い始めるわけですし……まいらちゃんも誘いません?そしたら、希和子さんと一緒に過ごす時間も増えるし……。」

そう言ってみたけど、希和子さんのお顔は晴れなかった。



たくさんの漆器を拭いたあと、今度はさらに多くのお抹茶茶碗を洗って、拭いた。

「……けっこう大変なものですね。こんなにたくさんあると。」

そう言うと、玲子さんは大きくうなずいた。

「でしょう!ね?これを、希和ちゃん1人でする必要ない!みんなでやれば早いわよ。」

「……でも、家元の社中さんは、明日丸一日御奉仕してくれはるのに、前の日の雑用まで頼めへんわ。……それに、お道具はみんなお寺の什器ですから。」

「……お寺の職員さんにも手伝ってもらえないんですか?」