小夜啼鳥が愛を詠う

……仲良しだなあ……寸暇を惜しんで、会いたいのかな。

「やったー!桜子!着物!着物!明日は小紋がいい!」

……え……。

「着物なの?……3日連続着物……。」

なんで?

「薫は作務衣やで。来るなら手伝ってーや。」

藤巻くんにそう言われ、薫くんはうなずいた。

「ええで。掃除け?手伝ったるわ。」

「サンキュー。助かるわ。……あ、桜子さんは、お客様でいいから。ほな、時間はあとで連絡入れるわ。」

藤巻くんは、颯爽と去っていった。


……んー?この展開は、いったい?

私に着物を着させたい薫くんの思惑と、薫くんにお寺の手伝いをさせたい藤巻くんの思惑が一致したのかな。

まあ……いっか。



翌日、ブランチを楽しんでから着物に着替えた。

13時頃、お寺に到着。

花まつり……あー、お釈迦様のお誕生日か!

白い象の張りぼてとか、お釈迦様の小さな銅像に甘茶をかけたりとか……何となく、お寺の新人職員っぽいヒトたちが、参拝客を案内していた。

私たちの目指す建物は、境内の端にあった。

小石を敷き詰めた広い境内をジャリジャリ言わせて歩いてると、
「さっちゃーん!」
と、私を呼ぶ声。

玲子さんだ!

「こんにちはー!わ、玲子さんも着物!」

「うん。ここに出入りする社中は、みなさんいつも着物だから。……久しぶり、薫くん。キミは袴じゃなくて、作務衣でいいわよ?」

「よぉ、玲子。誘ってくれて、ありがとう。習うわ。よろしく。」

相変わらず、玲子さんのことは呼び捨てなのね……薫くん……。

てか、習う?

「よし!決定!……じゃあ、せめてお稽古の時は、『玲子さん』って呼びなさいね。他のかたがたがびっくりされるわ。」

……え?

お稽古?

あれ?

「……今日って……お茶のお稽古なの?」

単に、国宝の建物に入れてもらえるんじゃなかったのか。

「正確には、お稽古じゃない。……んー、明日のためのリハーサル?いつも閉め切ってる建物だからね、実際にお茶席を設けて、釜を掛けて、お茶を点てて……って、確認作業?さっちゃんは、お客さま役で座っててくれればいいから。薫くんは、お掃除とセッティング、よろしく!」

「おう!ほな、玲子!桜子のこと、頼むわ!」

薫くんは、軽やかに走って行った。