小夜啼鳥が愛を詠う

自室に戻ると、すぐに原さんが来てくれた。

「やはりプロのカメラマンに依頼すべきでした。せっかくの美男美女が、これじゃただのスナップですよ。」

原さんは舌打ちしかねない表情で、既に台紙に納まっている写真を私にくれた。

「……充分、きれいに撮っていただいてますが……。」

春のぼんやりした空気まで写り込んでる気はするけど、ちゃんと寄り添って笑顔の写真だし、いいんじゃない?

「園遊会の時には、着崩れされたかたのために着付けやヘアメイクの専門家を待機します。カメラマンも。……その時にまた被写体になっていただけますか?」

お願いや質問、確認のふりをした指示だわ、これ。

まあ、いいか。

「わかりました。お手数おかけいたします。よろしくお願いします。」

薫くんは、ノリノリでつきあってくれそう。

台紙に貼り付けた写真の薫くんに、私の頬が緩んだ。



帰宅すると、藤巻くんが来ていた。

藤巻くんの大学は4月1日に入学式だったので、既に部活で忙しい日々を送ってるんだろうなと思っていたのだけど……

「藤やん、今日はクラスの花見ねんて。」

「お花見っちゅう名目の飲み会ですわ。……あ、いや、懇親会。」

なるほど、まだ未成年だから飲み会はまずいよね。
建て前だけでも、懇親会、ね。

「桜子さん、元気そうでよかった。急に、職場が変わらはって、主婦になって……って、大変でしょう?」

藤巻くんにいたわられ、私は苦笑した。

「ありがと。でも、薫くんがほとんどやってくれるの。助かってます。」

薫くんは得意げに胸を張っていた。

普段はカッコイイのに、藤巻くんとじゃれあってると子供の時と同じ顔になるのね。

かわいあなあ……と、また見とれた。


「あ。そうや。明日、普段、非公開の国宝の建物を開けるんやて。見に来いひん?」

靴を履きながら、藤巻くんが誘った。

「明日……は、明後日に備えてゆっくりしてよう思とってんけど……。」

ちらりと、薫くんが私を見た。

観たいのかな?

「どこ?坂巻さんのお寺の施設?……お邪魔じゃないなら、少しだけイイ?」

私の同意を得て、2人は見るからに喜んでいた。