小夜啼鳥が愛を詠う

「サンドイッチにも合う!……ねえ、この薫製っぽい香りは?」

「おー。よぉわかってくれたな。それ、薫製バターやねん。美味いやろ?」

薫製バター!

そんなのあるんだ!

チーズならともかく、バターってすぐ溶けそうなのに。

低温でじっくり燻すのかなぁ。

「美味しい。ハムも卵も、チーズも、香ばしさで引き立ってるみたい。サンドイッチもアイスティーもおかわりしたいぐらい、好き!」

「……ほんなら、よかった。おかわりは、やめとき。薫くん待ってるやろ……夕食。」

そう言ってから、義人さんはカレンダーを見た。

「あれ?明日?薫くんの入学式。……さっちゃん、遠慮せんと、休んで付き添ったげや。」

「や!いいです。仕事だし。」

私は、慌てて手を振って断った。

でも義人さんは、有無をいわさなかった。

「あかんて。ちゃんと、かわいい格好して、ぴったりくっついて練り歩いて来ぃ。」

「存在アピールして来るの?……やだ。恥ずかしい。それに、そんなことのために欠勤できません。」

キッパリそう言った私の額を、義人さんは人差し指で軽く突いた。

「真面目すぎ!もっと気楽でいいで。……原さんに言うとくわ。何とかしてくれるやろ。」

……甘い。

「おじいさまだけじゃなく、義人さんも甘すぎやわ。」

そうぼやくと、義人さんは胸を張った。

「ゆっとくけど、社長より俺のほうが、べたべたに甘やかすの好きやで。……まあ、2人とも、さっちゃんがかわいくてしょうがないんや。今までずっと、何もできひんかったからな。ここぞとばかりに、あれもしたいこれもしたい……って、世話焼きたいんやろ。……もう一人、うちにもいるよ。さっちゃんを猫っかわいがりしたくてしょうがないヒトが。気負わんと、甘えてやって。喜ぶから。」

……おばあさまのことよね。

「甘えるの、苦手……。時間かかるかも……。」

自信がなくて、そう泣き言をつぶやいた。

「どこが?」

義人さんにそう突っ込まれた。

……ふむ。

確かに、今、もう既に、義人さんには甘えてるなあ。