小夜啼鳥が愛を詠う

「……意外と美味しいで。試してみ。昼のサンドイッチ、まだ少しあるけど、食う?」

「え!いいの?欲しい。すごく美味しかったの。」

「そりゃどうも。お姫さまのお気に召したなら、また作りましょ。」

義人さんは、怪しげなラプサン・スーチョンの缶を開けて鼻を近づけながらそう言った。

……え?

お姫さま呼びは気恥ずかしいのでスルーするとして、……あのサンドイッチは……?

「義人さんが作ったの!?」

「パンを焼いたんは、お母さんやけどな。」

「……お料理までするんや……。」

さすがモテ男……。

茶葉とわずかなお砂糖を入れたポットに、再沸騰でシュンシュンのお湯を注ぐ……蓋をしてても広がる、独特のスモーク臭。

「料理は、夏子さんのを見て覚えた。……サンドイッチは……多少アレンジ加えたかな?」

そう言いながら、取り出したのは、レモン。

「何で、お部屋にレモンまであるの?」

驚いてそう聞いたら、義人さんはさらっと言った。

「うち、レモンの木が何本もあるから、年中、自家製レモンがあるねん。レモン嫌い?」

「……ううん。好き。丸ごと冷凍して、お料理にすり下ろして食べるのも好き。……でも、マイレモン常備してるヒト、はじめて見た。」

そう言ったら、義人さんはレモンを手の中でコロコロと転がしながら平然と言った。

「手軽やし、スッキリするで。さっちゃんも育てたら?レモンの木。……この香りが気に入ったんやったら、お勧めするわ。」

そっか!

レモンの花は、義人さんの香りなんだ!

……マジで鉢植え買おうかな。

義人さんは、ワインのポアラーのようなステンレスの太い管をレモンに突き刺した!

「もしかして、包丁で切らなくても、それで絞れるの!?」

「うん。まな板と包丁は常備してへんし。これなら手軽やろ?……氷もろてくる。」

義人さんはそう言って、一旦、部屋を出て行った。

……マメだわ。

さすがモテ男!

独りになって、はじめて、義人さんのお部屋をキョロキョロと見回した。

私のお部屋より暗めの色の木製品が多く、落ち着いた雰囲気。

あ……。

桜のリトグラフ。

義人さんのデスクのすぐ横の壁に掛けてあった。

部屋の飾りではなく、自分が眺めるためのポジションだわ。

……折に触れ、愛でてらっしゃるのかな。