小夜啼鳥が愛を詠う

不意に竹原さんの懐がブルブルと震えた。

電話がかかってきた?

我に返って、慌てて、普通にソファに座り直した。

「……原さんや。」

義人さんは私にそう言ってから、電話に出た。

「……はい。そうですか。ありがとうございます。……そうですね。……わかりました。わざわざ。どうも。ありがと。」

普通にお話されてたのに、最後はそそくさと照れくさそうに義人さんは電話を切った。

そして、画面をじっと眺めて苦笑して、私に言った。

「もうすぐ3時やから、さっちゃんにお茶を入れて持って行けって。ついでに、サンドイッチだけじゃ小腹すいてる頃やろうから、何かお菓子差し入れろって。」

「え……。義人さんが?お茶を入れてくれるの?」

びっくりした。

いつも、秘書の女性が持ってきてくださるんだけど……。

「そうらしいわ。さっちゃんが、資料のことで質問があるらしいから顔出せって。……でも最後に、早よせんと秘書課の子が来るから、ってさ。たぶん、既に一緒にいること、バレてるんやろ。」

「……あー……。……あのぉ、原さんって……怖いヒトなんですよね?私には優しいので、つい甘えてるんですが……。今日の午後なら義人さんに逢えるとか、芦沢さんは奥さまの味方だとか……わりと、きわどいことも教えてくださるので、どういうスタンスのかたなのかわからなくて。……原さんは、義人さんの味方ですか?おじいさまの味方ですか?」

「ちょー、待って。とりあえず、秘書課にストップかける。話はそれからや。」

義人さんはそう言うと、デスクの電話でお茶の準備をしないように指示してから、おもむろにお茶のセットを出し始めた。

「何が好き?紅茶。フレーバー系?ストレート?」

「あー、何でも好きです。うちでは紅茶ばかりなので。お店開けるぐらい揃ってますよ。」

そう言ったら、義人さんはちょっと遠い目になった。

「そういや、いろんな種類の紅茶、楽しんではったな。夏子さん。……何でもええん?ラプサン・スーチョンでも?」

あ。

イケズだ。

「正露丸の匂いのする紅茶でしょ?飲んだことあるけど、苦手。」

でも義人さんは、飲ませたいらしい。