小夜啼鳥が愛を詠う

「うん。知ってる。……あおいちゃんもそうやってんで。ちょっと有能過ぎて、会社が大きくなってしまってるだけで。」

義人さんの言う通りだ。

確かに、あおいさんは……すごい。

とても真似できない。

……そうか。

だからこそ、私と、薫くんを、修業に出したのか……。

あおいさんの真似をするんじゃなくて、違う視点と手法を身につけるために?

「薫くんと私が、小門の会社だけじゃなく、ココも担うの?」

改めてそう聞いてみた。

義人さんは、苦笑した。

「先のことは、わからん。でも、社長はそのつもりになってるし、小門とあおいちゃんは吸収合併じゃなくて対等な関係に持ち込む気やろし、俺は……さっちゃんに負の財産を残したくない。ちゃんと整理してから金の卵だけ託したい。……これで、説明になったかな?」

……私は、渋々うなずいた。

たぶん、嘘はないだろう。

でも、やっぱり、過度に期待されすぎだよ……。

「納得はしてへんみたいやなあ。」

義人さんはそう言って、私を抱き寄せた。

きゅーっと胸が……しめつけられる……。

涙がこみ上げてきた。

「……それが……望みなら……。」

涙と一緒に、勝手に言葉がこぼれ落ちてく……。

「……うん。望んでる。」

義人さんはそう言って、ハンカチで私の涙を拭いてくれた。

「……こっちも。」

既に頬をつたい流れ落ちた涙を拭いてもらおうと、顎を上げてアピールした。

義人さんは、楽しそうにほほえんで拭いてくれた。

「ほんまや。こっちは?」

ハンカチではなく、指先でくちびるをなぞられた。

……きゅん!

「赤くなった。赤ちゃんみたいやな。肌もつるつる。」

そのまま、頬を撫でられる。

くすぐったくて、肩をすくめた。

「かーわいぃ。」

からかわれてるんじゃなくて、本当に心からかわいがってくれてるのがうれしくて……でも恥ずかしくて……

「何の香水つけてるの?イイ香り。」

ガバッと義人さんにしがみついて、鼻をすりつけてそう聞いた。

「……香水じゃないで。男性用の香水あんまり好きちゃうねん。これは、レモンの花。」

「レモン!……そっかあ。ネロリより甘い気がしたの。素敵。私も、欲しい。」

しがみついたまま顔を上げてそうおねだりした。

まるで小さな女の子が父親に甘えてるみたいに……。