小夜啼鳥が愛を詠う

「……うん。違います。」

同意したら、涙がこみ上げてきた。

「さっちゃんは……希望。……成りたくても成れなかった俺の理想。俺の分身。……悪いけど、一緒に、重荷を背負ってくれへんか?」

義人さんは、私の目を見てそう言った。

……すごいこと、言われてる……。

「買いかぶり過ぎです。……私、そんなに、優秀じゃありません。」

「そうか?さっちゃん以外のみんなが、さっちゃんを認めてるで。」

私はぶるぶると首を横に振った。

「そんな気概ありません。言われた業務をこなすだけの能力しか、ありません。せめて、私があおいさんほどギラギラしてたら……。」

義人さんは、私の左手をそっと取ると、私の目の前に薬指をかざした。

結婚指輪がキラッと光った。

「ギラギラした奴、いるやん。すぐそばに。……足りひんとこを補って余りあるやろ。」

「……薫くん?」

確かに……ギラギラは、してるわね。

「小門とあおいちゃんを見てて決めた。もちろん2人ともが並外れて優秀やけどな……お互いの短所と長所をうまくバランスとってる思わへん?あれ、理想。たぶん、今から仕込めば、薫くんはあおいちゃんに、さっちゃんは小門になれると思わん?」

「……薫くんはともかく、私は……。」

ドキドキする。

いつから……いったいいつから、私の前に、仰々しいレールが敷かれてたんだろう。

「いや。小門もあおいちゃんも、さっちゃんには太鼓判押してる。むしろ薫くんや。いっそ、うちの社長に預けてみる賭けに出てもいいな。薫くんなら、潰されんやろ。」

え?

薫くん?

あれ?

「じゃあ、私の出向は、目的でも手段でもなく……足掛かり?」

最初から、薫くん育成ゲームの一つの局面だったってこと?

「うーん。さっちゃんの出向は決め手やったと思うで?単に孫がかわいいだけやった社長が、さっちゃんの能力を知って、脳天気な期待してるし。俺をすっ飛ばして、さっちゃんを後継者に育てる勢いやろ?」

義人さんは、おかしそうにそう言った。

……よく笑えるなあ。

「困ります。無理です。私はただ、薫くんが小門の会社を継いだ時に、少しでも支えてあげたい一心で勉強してるだけです。」

こんな大きな会社まで、背負えない!