小夜啼鳥が愛を詠う

うなずく私に、義人さんはうなずき返して、続けた。

「社長が次に目を付けたのが、恭匡さんの養子に入った、碧生(あおい)くん。恭匡さんの従妹の百合子の旦那。」

「……大学の準教授とうかがいました。」

「うん。天才レベルに優秀。意志も強い。……ただし、自分の研究には熱心やけど、商売に興味一切なし。ついでに言うと、百合子は社長の娘で俺の妹。……さっちゃんの実の叔母ってことになるな。これは絶対に内緒やで。」

しーっと、竹原さんは自分の人差し指を私のくちびるに軽く宛ててそう言った。

話の内容にもびっくりしたけど、……そのボディタッチは……甘すぎです~。

ドキドキするわ。

「なるほど。……家系図にできない関係ですね。わかりました。」

取り澄ましてそう言ってから、ふと気になって、聞いてみた。

「その……百合子さんとおじいさまの関係は良好なのでしょうか。義人さんや、もう一人の妹さんの由未さんとの関係は?」

義人さんの顔に複雑な色がまじった。

……あ……もしかして……。

「いや、いいです。ごめんなさい。」

思わずそう言ったけど、竹原さんは、くしゃくしゃと私の頭を撫でた。

「頭のイイ子やなあ、ほんま。小門とあおいちゃんのお墨付きは伊達じゃないわ。……百合子と由未は、今は仲良しやわ。でも、社長と百合子は口も効かん。身分が違うそうや。……笑うやろ。いまどき。……でも、もっと笑えるんは……あれや、報われない何ちゃらコレクター?」

「……あー……。ご愁傷様でした……。」

そういうこと……か。

義人さん、腹違いの妹さんとも、そーゆー関係だったのかな。

私は思わず、義人さんの髪の毛をそっと撫で返した。

「……つらい想い、いっぱいしてきはったんですねえ。全方位にモテはるのも考えものですね。」

義人さんが、マジマジと私を見つめた。

私に……似てる……気がしてきた。

……父親……かぁ。

会社を継ぐとか継がないとか、出向とか、業務提携とか……そんなこと、どうでもいい。

何もなくても、義人さんと私は、つながっている……。

逢えなくても、存在自体知らなくても……はじめから、私の中には、義人さんの血が流れている。

義人さんの遺伝子が、常に私の中に息づいている。

「これ以上、コレクション増やすのは酷ですね。」

私はそう言って、義人さんから手を離した。

愛しさが胸に広がる……。

「……ちゃうで。さっちゃんは。」

義人さんが、私の手をそっと取った。