小夜啼鳥が愛を詠う

「どう?足りないもんない?何か足す?」

光くんパパは、インスタントや缶詰ではなく、ちゃんとミートソースを作ってくれていた。

お肉がいっぱいですごく美味しい。
てか、お肉が甘い!
絶対、いいお肉だわ、これ。

「も、めっちゃ美味しいです。このまんまで!あ。パスタ!圧力鍋で湯がきましょ?もっちりするみたい。」
ママのお料理を思い出してそう言ってみた。

光くんパパは、ふんふんうなずいて、棚から重たい圧力鍋を出した。

「社長、夕べ、さっちゃん家(ち)に泊まったらしいわ。」
さらりと、それでいて、何かもの言いたげな光くんパパ。

「……玲子さんも?」
恐る恐るそう尋ねてみた。

「いや。独りらしい。」

そう言って、光くんパパは唇を引き結んだ。
端正なお顔がますますキリリとかっこよくなった。

何を考えてるんだろう。

「玲子さん、お仕事忙しいのかな。」
そうつぶやいてから、ふと気づいた。

「もしかして、玲子さん、成之さんと別れる気になった?だから働き始めたとか?」

思いつきでしかなかった。
でも、光くんパパは否定しなかった。

「……俺もそう思う。他にいい男ができたんなら安心やけど……変な男に騙されとられんか、心配や。」

ほらほらほら。
光くんパパ、優しい。
何で、父親を奪った愛人をそんな風に心配するの?

首を傾げてじっと見つめると、光くんパパが苦笑した。

「なに?偽善的って思っとるんか?」
「……ううん。偽善者とは思わないです。心から心配してるの、わかるから。でも、不思議。……玲子さんのこと、憎らしくないの?」

そう尋ねたら、光くんパパは真面目に話してくれた。

「感情でも法律でも割り切れんもんがあるって知っとーからな。憎くない。むしろ、悪いなって思う。今は。……俺のために入籍できんまま……つらかったやろな、って。たとえ、これから先、社長と別れることにならはっても、彼女が今後の生活に困らんように……って思っとるんやけど……余計なお世話かな。」

光くんパパはそう言って、苦笑した。

「彼女、どんなヒト?……マスターに聞いてもあまりいいこと言わんから、わからん。」
「どんなって……勝ち気で強気で、けっこうきついけど、情の深いヒト。優しさがわかりにくいけど、すごく優しいの。」

そう答えたら、光くんパパはうなずいた。
「そうやろな。そんなイメージ。……ありがとう。さっちゃん。教えてくれて。……これからも、彼女と仲良くしたげてな。」

意味深な言葉だった。
まるで、これから、なにかが起こることを示唆してるかのよう。

わかんないわ。

光くんパパは、小さい頃から連珠の鍛錬を積んだので、先を読む習性があるらしい。

いったいどんな未来を見つめてるんだろう。

血はつながってないはずなのに、やっぱり光くんと似てるかもしれない。