小夜啼鳥が愛を詠う

「……いつからそんな風に考えられるようになったんですか?」

すごいことを、さらっと言ってる……。

大き過ぎるって言っても、どの部門も右肩上がりのすばらしい業績なのに……。

私に?

私が、この会社を継ぐの?

……絶対無理。

それに、まいらちゃん、いるのに……。

「いつから……そやなあ。……この会社に入って、資料室の膨大な資料を整理してるうちに……社長と同じことは俺にはできひんって思い知ったんかな。」

……やっぱり、あの資料……義人さんご自身が取り組んで作ったんだ……。

「社長はもともと、俺にあまり期待してなかったんやけど……俺の目論見を伝えると、完全に呆れられてしもてな。社長の目の黒い間は、俺は飼い殺しにするらしいわ。……だから勝手に準備を進めてる。ごめんな、せやし、すっごい空気悪いやろ?社長と俺。」

「あー……はい。なんか、たけ……義人さんが、気の毒でした。」

まるで、虐めだよ……それ。

大人げないわ、おじいさま。

「いや。社長のような気概がない俺が悪いんやろ。……でもなあ……自分の父親ながら、あそこまでガツガツした有能なヒト、他に見たことないで?有能な奴も、ガツガツした奴もいくらでもいるけど、あれほどのレベルで兼ね備えてる奴は、知らんわ。」

義人さんは肩をすくめて、それから、ちょっと笑った。

「そもそも今の時代に、日本でハングリーな起業家がそんなにいいひんしなあ。……あおいちゃんにはその手腕があるけど、あくまで小門の補助しかせんやろ?」

私は、大きくうなずいた。

「お義父さんももちろんすばらしい経営者ですけど……あおいさんは、まるでゲームのように大胆に事業を展開します。お義父さんも私も、とても真似はできません。」

義人さんはうなずいた。

「うん。そんな感じ。一緒や。……でな、もともと社長は妹の旦那のことも、後継者にしたいって思っててんわ。」

「……天花寺(てんげいじ)さんのことですか?」

「うん。恭匡(やすまさ)さん。でも、あのヒトは根っからの貴族で、商売に興味ないねんわ。」

あー、なんか、わかる気がする。