小夜啼鳥が愛を詠う

……うん。

そうかもしれない。

父と娘って関係を築いてこなかったんだもん。

惹かれ合っても、しょうがない。

「原さんには、アナイス・ニンと揶揄されました。」

私、言外に……「抱いて」って、迫ってるのかもしれない。

そんなつもりなかった……なんて建前だ。

少しでも、竹原さんと一緒にいたかった。

今までも、これからも……たぶん家族にはなれないから。

他人に戻りたくない。

唯一の特別なヒト……。

「……刹那的やな。やめとき。後悔するで。……さっちゃんには、大事なヒト、いるやろ。」

ため息混じりの否定の言葉は魅惑的すぎて……。

……そんなの、拒絶になってないよ。

でも、竹原さんが自分にブレーキをかけているのもわかった。

「奥さまは、幸せですね……。」

私もため息をついちゃった。

「……そうやといいんやけどな。実家の寺の中がゴタゴタしてたり……、娘とイマイチしっくりしてへんかったり……姑と義理の姉の身体も心配やし、舅と旦那は折り合い悪いし……悩みは尽きひんみたいやなあ。」

あ……なんか……突き放された気分。

……そっかぁ。

奥さまが幸せじゃない限り、竹原さんも心から幸せじゃないんだろうな。

そこに、私が存在しようが、しまいが……一時的な慰めでしかないのかもしれない。

……ううん。

もし、本当にアナイス・ニンになったら、たぶんそれっきり……もしくは、逆に離れられずに、ずるずると……煉獄に陥るのかもしれない。

でも、家族じゃないけど血のつながった娘として、他のヒトとは違う次元に存在していれば……私は永遠に特別でいられる?

……諸刃の剣だなあ。

私にとっても、一生の特別……。

あ!

そっか!

そういうことか!

「報われない恋コレクター!」

思わず言っちゃった。


竹原さんは、キョトンとして、それから苦笑い。

「何?……俺?……誰が言うたん?春秋くん?野木ちゃん?……ひどい言われようやな。」

「……ごめんなさい。あまり意味がわからなかったんですけど……要は、社会通念的に成就させるべきではない恋愛関係を、忘れることも捨てることもできずに心の中に大切にしまっておく……それって、多少被虐的なロマンチストですね。光くんも、あおいさんのこと、諦めるというよりは、形を変えて大事にしてる気がする……。」