小夜啼鳥が愛を詠う

ついつい、ため息をついてしまった。

もちろんそんなつもりないけどさ……。

経験のないこの感覚を持て余しているのは、事実だ。

たぶんちゃんと、竹原さんと私は父娘だと自覚して接すれば変わると思うんだけど……。



その日のお昼は少し慌ただしかった。

11時半過ぎには、おじいさまが私の部屋にいらっしゃった。

秘書の芦沢さんが、2人分のサンドイッチやコーヒー、フルーツを持ってきた。

「ちょっと早いけど、軽いから食べられるだろ?」

「はい。ありがとうございます。」

……てか、急ぐなら、お先に召し上がられればいいのに……無理しても、私と過ごそうとしてくださっているおじいさまのお気持ちが、くすぐったく、うれしかった。

今日のサンドイッチは……手作り?

お店のものじゃないのかな?

タッパーウェアに整然と並んでるサンドイッチは、1セットずつラップにくるまれていた。

「もしかして、おばあさまの……手作りですか?」

そう尋ねると、おじいさまはちょっと変な表情になった。

あれ?違った?

「いや……うん。あー……パンを焼いたのは家内らしい。が……サンドイッチは、あまり得意じゃないらしくてね。」

「……そうなんですか?……美味しい……。」

うん、でも、これ、手作りだ。

たぶん、マヨネーズにも工夫してあるし、すごく手間暇かけて作ってくれてる気がする。

竹原さんの奥さまか、あるいはお手伝いさんが作ってくださったのかな。

「まあ、たまには、コレも……悪くないな。……ところで、これから西宮に行くから、いつも通り、足を延ばして神戸に顔出してくるわ。桜子と離れて、淋しがってはるやろうなぁ。」

おじいさまは、楽しそうにそう言った。

「そうですか。父と光くんによろしくお伝えください。」

まだ一週間ちょっとしかたってないのに、何だか懐かしい。

薫くんの教習所もあるから、ゴールデンウイークまで帰らない予定なんだけど……私も、ちょっと行きたいかも。



おじいさまを見送って、12時半に仕事に戻る……。

「真面目ですねえ。ゆっくりしてらしたらいいのに。」

揶揄されたけど、原さんもサボるようには見えない。