小夜啼鳥が愛を詠う

講師を招く?

そっか。

新入社員達の研修を一緒に受けるのかぁ!

やっと利解した!

「わかりました。……ところで、この資料はどなたが作られたのですか?すごくわかりやすくて簡潔なのに、大事なところはびっくりするぐらい詳細で……一読するだけで把握できた気になるんですけど。原さんがまとめられたのですか?」

「いえ。義人さんですよ。取捨選択の基準……というか、感性が似てらっしゃるのでしょう。桜子さんと。」

原さんはそう言って、慇懃無礼にお辞儀をして部屋を出て行った。

取り残された私は……やばいぐらい動揺していた。

……竹原さんとは、ほとんど関わってないのに……どうしてイチイチ共鳴するんだろう。

血縁ってすごい……。



17時前に原さんが終業を知らせに来てくれた。

「ありがとうございます。……あ、それ!洗い物ぐらいは、自分でやらせてください!お客さまじゃないんですから。」

秘書の女性が片付けようとするのを、慌てて止めた。

でも原さんは彼女に片付けを指示してから、私に言った。

「お客さま扱いしているつもりはありません。桜子さんは経営者一族の一員です。ご理解ください。」

「え……。出向じゃないんですか?」

話が違う。

「ただの出向なら、役員フロアに部屋を与えられることはありません。」

原さんはそう言って、ニッコリと笑顔を作った。

有無を言わさないつもりらしい。

「……わかりました。」

たぶん、去年とは状況が変わっているのだろう。

野木さんの結婚式で、おじいさまと引き合わされてから……会社同士の関係も、将来的な計画も、当初の予定から大きく方向転換してる気がする。

行き着く先は……いったいどこなのだろう……。




「ただいま~。」

隣のマンションに帰ると、薫くんが迎えてくれた。

「お帰り。……疲れた顔しとるわ。大丈夫か?」

「うー。大丈夫じゃない。なんか、イロイロ勝手が違って……大事にされ過ぎて、つらい。」

そう言ったら、ホロリと涙がこぼれた。

ギョッとしたらしく、薫くんが慌てて私を抱きしめた。

「なんやなんや。よっぽど気ぃ張りつめとってんなぁ。どしたん?言えることだけ、ゆーてみ?」