小夜啼鳥が愛を詠う

「お疲れ様でした。」

13時ちょうどに迎えに来てくださった原さんは、エレベーターに乗ると、そうねぎらってくれた。

「……本当に……疲れました。せっかくのお料理もお庭も桜も楽しむ余裕ありませんでした。」

そう言うと、原さんはクスッと笑った。

嫌な感じじゃなく、普通に笑ってる!

ちょっとホッとして、私は図々しくお願いしてしまった。

「突然、親戚が増え過ぎて混乱しました。家系図が欲しいです。原さん、詳しく教えてもらえませんか?」

原さんの笑顔が固まった。

……ダメらしい。

やっぱりイロイロややこしいのかな。


「わかりました。その都度、自分で整理して覚えます。すみません。」

そう言ったら、原さんは苦笑した。

「……本当に桜子さんは……一を言えば……いや、言わなくても、察知されますね。義人さんとよく似てらっしゃる。」

びっくりした。

似てるの?

本当に?

「天花寺さまは、桜子さんに由未さんを重ねられたようでした。好印象のようで安心しました。……天花寺さまは、もともとは社長にとって主筋に当たる大切なおかたなので、真っ先に桜子さんを引き合わせられたのでしょう。」

原さんは天花寺家との関わりについてつらつら述べてらしたけど、私は、竹原さんと似ていると言われたことがうれしくて、浮かれてあんまり耳に入って来なかった。



昼からも、いかにもな内部資料を丹念に見せてもらってるうちに時間が過ぎていく……。

私、これから何の仕事をするんだろう。

飼い殺しじゃないよね?



15時にコーヒーを持って来てくださった原さんに、それとなく聞いてみた。

すると意外な答えが返ってきた。

「来週からは半日ずつ研修を受けていただきます。」

「あれ?研修って……コレじゃなかったんですか?」

てっきりこの資料の熟読が研修だと思った。

原さんの片眉がぴくりと上がった。

「……まさか。」

たった一言が重かった。

呆れられた?

てか!

研修って……いったい……。

何するの?

「何か、下調べとか、準備しておくこと、ありますか?」

「いえ。その必要はありません。提携の人材派遣会社から講師を招きます。桜子さんは定刻通りに本社に出勤してくださればけっこうです。もちろん残業も必要ありません。」