小夜啼鳥が愛を詠う

「……由未ちゃんはともかく、まいらちゃんと比較しても仕方ないでしょう。却って失礼ですよ。お義父さんのおっしゃる通り、マナーはすばらしいですよ。小さい頃からちゃんとしたかたに教わって身についてらっしゃるのでしょう。でも習い事としてのお茶のご経験はないようなので。」

「はい。ありません。……やっぱりわかるものなんですね。」

何となくしょんぼりしてしまった。

おじいさまの気遣わしげな視線を感じて、私は顔を上げた。

「主人の祖母が折に触れ、主人や義兄に注意するのを、そばで聞きかじってただけで、何も知らないんです。これまではそれで充分かと過信してました。……せっかく京都に引っ越して来たので習ってみようと思います。ちょうど、母の友人に誘われているので。」

天花寺さんは、ほうっと息をついて笑顔になった。

「前向きで頼もしいですねえ。でも気負わずに楽しく習われるといいですよ。……では、そのうちに、桜子ちゃんにお茶を点ててもらおうかな。……はい、どうぞ。」

そう言って、天花寺さんがお茶を出してくださった。

「ありがとうございます。お点前頂戴いたします。」

お抹茶茶碗は、赤い光沢のある、ごぼごぼした形だった。

赤楽……かな?

おじいさまのお抹茶が真っ黒だから、たぶん黒楽よね?

とりあえず、正面を避けて……美味しい!

玲子さんが気にってらっしゃる甘~いのとはまた違う。

むしろ濃厚というか、苦みが強いんだけど、美味しい!

「……すごく美味しいですね、これ……。」

驚いてそう言うと、おじいさまがうなずいた。

「うまいんや。恭匡くんが点てると。……しかも昼からどんな退屈な仕事でも眠くならへんわ。毎日、昼休みの終わりに飲ませてほしいぐらいやわ。」

「……たまに飲むから美味しいんですよ。」

天花寺さんはすましてそう仰ったけれど、褒められて、気分が良さそうだった。

……なんか……さ……。

おじいさまと天花寺さんって、けっこう仲良しさん?

舅と婿って言うより、実の父子みたいに打ち解けてらっしゃる気がする。

竹原さんに対する態度と、全然違う気がする……。

天花寺さんのことは尊重して、息子の竹原さんには遠慮がないってことなんだろうけど……それにしても、違い過ぎて……竹原さんが気の毒になる……。