小夜啼鳥が愛を詠う

お弁当と仰ったけど、黒塗りの扇面型のお重箱にお料理がおさまったものの他に、炊き合わせと、しんじょうと、お吸い物とたけのこご飯が温かい状態で別のお椀で出てきた。

……どれもすごく美味しかった。

「ご飯のお代わりは如何ですか?」

天花寺さんにそう尋ねられ、私は慌てて断った。

「ありがとうございます。でも、もう充分いただきました。すごく美味しいから欲張りたいけど……スカートが……。」

すると天花寺さんは、ほほ笑み、うなずいて、さらに仰った。

「では、残りは持ち帰られますか?」

「……え。いいんですか?ありがとうございます。」

素直にうれしかった。


お膳が片付けられると、おもむろに天花寺さんがお茶を点て始めてくださった。

食事中は静かだったのに、天花寺さんもおじいさまも普通に話し始めた。

「由未(ゆみ)から、恭満(やすみつ)くんは東京を受験するつもりだと聞いたが……。」

「ええ。父親が准教授の大学では、やはりやりにくいそうです。まあ、好きにすればいいですよ。あ、瑠璃子(るりこ)は出しませんけどね。」

……受験生の息子さんがいるのかしら。

あとで、原さんに聞こう。

暢気にそう思っていたら、おじいさまが説明してくれた。

「娘の由未は難病で子供を産めなくてね、」

「僕の従妹を夫婦養子に迎えたんですよ。恭満と瑠璃子は、従妹の子ですが、戸籍上は僕の孫に当たります。」

天花寺さんはおっとりと、でも、すばやくおじいさまの説明を横から奪った。

超不自然。

難病ってことで外聞悪いのかしら?

よくわからないので、私は笑顔と軽い言葉で誤魔化した。

「お若いのにお孫さんがいらっしゃるんですか。」

すると天花寺さんはふふっと笑った。

「若いと言っても、桜子ちゃんのお舅さんより、確か、2つ上だよ。あおいちゃん夫婦も来年には、リアルにおじいちゃんおばあちゃんになるんじゃないの?」

ん?
あおいちゃん?

「……義父(ちち)と義母(はは)をご存じですか?」

驚いてそう尋ねると、隣からおじいさまが小声で耳打ちした。

「ごめんごめん。桜子。先に話しておくべきやった。娘の由未は、桜子と同じ高校に2年間通ってたんや。堪忍やで。」

え!
知らなかった!