小夜啼鳥が愛を詠う

「大晦日だけは真夜中に出かけられたやん?京都に住んでても正月は須磨か家やったし。しかも、桜子にも逢えるって。……せやし、ここにはいいイメージしかない。」

薫くんの言葉で、私の中の過去のもやもやも霧散した。

光くんに恋してた日々も、みゆちゃんの出現に動揺しまくったのも……今となってはいい思い出だ。

パパはずっと泣いていた。
朝、ご挨拶したときも、式の間も、披露宴が始まっても。

披露宴は、薫くんがまだ学生なので親戚だけで小規模に開いていただいた……はずなんだけど、その分、二次会がオオゴトになってしまった。

まあ……菊地先輩と椿さんが幹事をしてくれたら……そりゃ大きくなるよね。

披露宴は料亭の広間だったのに、二次会はホテルの大きなバンケット。

これからの人脈作りを視野に入れた……らしいんだけど、うちの会社のというより、みんなの名刺交換の場になってた気がする。

実際、椿さんは、ちゃっかりスポンサーを増やしてた……。

「お別れ会も兼ねてるからな。いいやん。どーんとやったら。」

すっかり造り酒屋の若旦那が板に付いた菊地先輩が大らかに笑った。

「まあ、4年で帰ってきますけど。」

「おう!単位落とすなよ!帰ってきたら、うちのチームに入りや。」

薫くんは、力強くうなずいていた。



「あー、薫くん。新婚の先輩として、アドバイスを……」

「いらんいらん。春秋先生にアドバイスもろたら初夜に嫁に逃げられるわ。」

体調の悪いらしい野木さんの代役としてせっかく祝福に来て下さった春秋先生に対して、薫くんはぞんざいにそう言った。

春秋先生は軽く咳払いしてから、めげずに言った。

「反省を踏まえて、のありがた~いお言葉やで。……さっちゃんは年上なだけやなくて、会社のためにイイ子でがんばってるんや。せやし、薫くんだけは、さっちゃんを甘やかしてあげや。拗ねても放置せんと。うちみたいに飛び出して逃げ込む場所があればまだいいけど……一人で飲み込んでしまう我慢を覚えさせてしもたら、淋しいで。」

誰から何を聞いての言葉なのかわからない。
けど、私には、春秋先生の言いたいことがよくわかった。

薫くんがどう捉えたかは、知らないけど。