小夜啼鳥が愛を詠う

私自身は、椿さんの会活動で忙しいママに代わって、これまで以上に家事を担った。

仕事と家事の両立は確かに大変だけど、専業主婦以外はみんなやってることだもんね。

薫くんがどの程度家事を助けてくれるかわからないし、過度な期待はできない。

慣れたら何でもないはず……と、私は花嫁修業に勤しんだ。



お正月が終わってから、藤巻さんが玲子さんとお祝いに来てくださった。

その日は、折しも薫くんのセンター試験の日。

朝から居ても立ってもいられなかった私の緊張感が、おかげでややほぐれた。

「藤巻くん、やっと、部活引退ですか?」

「うん。選手権終わったしね。でも、もう大学のサッカー部に合流してるの。お寺のお手伝いもあるから、実質、お休み、なかったわねえ。」
玲子さんが苦笑まじりにそう言った。

「え!早っ!……でも、そっかぁ。受験しないし、三学期は登校しなくていいだろうし……」

ちなみに、薫くんも登校してない。

自宅と、純喫茶マチネと、なぜか我が家を行き来して、受験勉強に励んでいる。

「ところで、さっちゃん。4月からも、お仕事は、土日はお休みなのよね?」

玲子さんにそう尋ねられて、ちょっとドキッとした。

「……うん。そのはず。……でも、始まってみないと、よくわからない……かな。」

私は意識して慎重に返事した。

「そっかぁ。そうよね。出向、だもんね。先様に合わせないとね。」

玲子さんは、納得してくれた……のかと思ったら、さらにズイズイと押してきた。

「じゃあさ、4月になって、様子見てから考えてくれたらいいから~、一緒に習い事しない?」

ほーら、きた。
絶対そういうお誘いだと思った。

京都に引っ越してから、玲子さんはいくつもの習い事で自分を磨き、藤巻くんのつきあう女の子にプレッシャーを与え続けている。

私が京都の大学に通ってる時もアレコレ誘われた……けど、光くんと神戸から通ってたし、結局、習えなかった。

今度は京都に移住するわけだから、そりゃもう、手ぐすね引いて待ってるよね。

習い事……ねえ……。

「お勧めは、月並みだけど、お茶、お華、書道。ちょっと変わったところで、お琴、お香、謡い、日舞、絵手紙。」