小夜啼鳥が愛を詠う

「障害って?」

ママは苦笑いしていた。

「……幼少期から一番大事だったのは妹さん。次に惹かれた私のことは、父親の愛人だと勘違いして横恋慕だと思ってたそうよ。」

……うわぁ。

シスコンの次は、寝取りってこと?

なるほど。

「他には?実のお母さんには懸想してらっしゃらなかったの?」

光くんの例があるので、私は冗談じゃなくて本気でそう聞いていた。

でもママは笑った。

「そんな、光くんじゃあるまいし。……それに義人くん、ベタベタに甘やかして可愛がって世話を焼くのが好きだからなあ……お母さんは対象外でしょうね。……奥さまのことは、ものすごーくかわいがってると思う。娘さんも。目に入れても痛くないんじゃない?」

「ふーん?……なるほど。春秋先生は、竹原さんの影響を受けてるって言ってたっけ。そーゆーことね。……そっかあ。それで私のことも、優しい目で見て下さってたんだ。」

そう言ったら、ママはちよっと困った顔をしていた。

……よけいなこと、言っちゃったかな。

「さっちゃん。分はわきまえてね。……私も、さっちゃんも……義人くんの奥さまにとっては……疎ましい存在だってこと、忘れないでね。……こんなこと言いたくないけど……今後も義人くんに逢うことがあるなら、何度でも言うからね。」

……ぐさーっと心に釘を刺されてしまった。

「そっかあ。……わかった……。」

そんな風には思いもしなかったけど……そりゃそうよね。

なんとなくおもしろくなくて、竹原さんの奥さんに反発を覚えてたけど……奥さんにしてみれば、それどころじゃないんだ……。

私のほうが、ずっと立場が弱く、分が悪い。

……認知どころか、隠し子ですら……ないんだから……。

本気で落ち込んだ。



翌日出勤すると、社長が言った。

「竹原の親父さんが、折れた。」

親父さん?

「竹原要人社長のことですか?……折れたって……?」

意味がわからず、そう尋ねた。

「拡大一途のワンマン社長が、いずれ売却するのを視野に入れた業務提携に前向きになった。」

……業務提携?

「うちが?業務提携するんですか?……規模がちがいすぎません?」