小夜啼鳥が愛を詠う

「桜子……。こんな時まで、他人のこと心配せんでも。」

あ……。

そっか。
そういうこと、か。

「薫くんも?私の心配してくれてた?大事な試合の時に……ごめんね。」

そう言ったら、薫くんは照れくさそうに顔をしかめて見せた。

「……桜子、さっきから謝ってばっかり。苛めてる気分になるし、もう謝らんとって。それより、けっこう最近、思い出したこともある。『さきや』と『きくの』って兄妹が踊っとった。『やすみつ』って、偉そうなぼんぼんがおった。それから……『なつか』って子から光が逃げ回っとって……『りひと』が歌ってて……。」

「何?何の話?」

聞いたことのない名前を挙げられて、私は慌ててそう尋ねた。

「うん?ほら、桜の城みたいなとこ。園遊会って、あれやろ?」

「え!薫くん、覚えてるの?まだ、ちっちゃかったのに!」

……てか、私、全然覚えてないのに……薫くん、すごい!

「いや、忘れてたで。でも、思い出してきた。……女神みたいな優しいおばちゃんが遊んでくれたわ。……あれが、桜子のおばあちゃんやて?」

「……覚えてないの。」

5つ下の薫くんがこんなにハッキリと思い出してるのに、私はどうして覚えてないんだろう……。

「そうか。まあ、来年、押しかけたらええやん。あの桜、もっぺん観たい。めちゃ綺麗やったわ。」

薫くんはそう言って、私の顔を覗き込んだ。

「桜子ほどじゃないか。」

……何と比べてるんだろう。

まあ、いいか。



その夜、パパが帰る前にママに聞いてみた。

「竹原さんって、報われない恋コレクターなの?」

ママは、ぶぶっ!と、飲んでた紅茶にむせた。

「……誰がそんなこと……。」
涙目でママが聞いた。

「え……野木さん。ママのことも入るのか知らないけど。」

そう言ったら、ママは困った顔になった。

「うーん。……あんまり偏見を植え付けたくないんだけど……隠したり嘘ついたりもしたくないし……うーん……。」

「偏見……ってことは、全く見当はずれではないのね。たとえば?」

身を乗り出して聞くと、ママは言葉を選んで語ってくれた。

「なんてゆーか……あの通り、およそモテる要素を全て持ってるヒトだから……女の子に不自由しないというか……障害があったほうが燃えるというか……難しいな……。」