小夜啼鳥が愛を詠う

「何?突然。」
野木さんは、面食らったようだ。

「……説教。聞きたくなければいいよ。」

光くんはそう言ったけれど、私は続きを促した。

「聞きたい。ね?野木さん。……説教と言うより、ありがたーいアドバイスだから。」

野木さんが私にうなずくのを見て、光くんは無表情に続けた。

「春秋氏って、顔も広いし、モテるし、守備範囲広いし……女友達も元カノも多いはずだよ。でも、披露宴に、関係してそうな女性、誰も呼んでなかったろ?……僕らの座った友人テーブルだけが人数少なかったことを考えてもさ、たぶん野木さんのために元カノを全部排除したんだよ。……なのに、野木さんは、さっちゃんのためとか言って僕を呼んで……さすがに春秋氏、おもしろくないと思うよ。」

……うわぁ。
光くんが、野木さんの「元カレ」枠に自分をいれた?

さすがに驚いてドキドキ見ていた。

野木さんは、本当に今まで思い当たらなかったらしい。

「……ほんまや。……いや、でも、春秋先生だって、竹原夫人を呼んでるし。」

「お兄さんの奥さん?ただの片想いじゃない。しかも家族ぐるみのつきあいだよ。……自分は寝た男を呼んでるくせに、既に既婚者の友達にイチイチ嫉妬してるって……野木さん、子供過ぎるんだよ。」

「光くんっ!」
思わず私は叫んでしまった。

……聞きたくなかった……光くんの口からそんな……そんな……

涙目の私に、光くんは苦笑した。

「ほら。さっちゃんも。今さら僕の過去の情事に動揺しない!……今までみたいに知らんぷりしといてよ。」

……情事……。

うわあああ。

天を仰いでジタバタする私と、うつむいてふるふる震える野木さん。

対照的な2人を見て、光くんはうっすら笑った。

……笑われた。


「……確かに。さくら女も私も……子供だと思う。たぶん、椿氏なら、もっとさらっとそういう話も受け流せるだろうし。」
しばらくして、野木さんがそう言った。

「……まあ、否定はできないわね。」
渋々私は認めた。

「これから先、必ずどこかで春秋氏の元カノに遭遇すると思うよ。その度に、野木さん、家出するの?……過去は過去って思えない?」

「……たぶんもう何人かには逢ってる……紹介されてないけど……睨まれたり、あざ笑われたりしてたし。特にパリの画商の女……ムカつく……。」