小夜啼鳥が愛を詠う

報われない恋。
……たとえば?

光くんみたいに実の母とか……?



ホイッスルが鳴った。
ゲームが始まるようだ。

「くだらないこと言ってないで、応援したげて。」

光くんが野木さんにそんなことを言った。

野木さんは、反抗的な気分らしく、べーっと光くんに舌を出した。

……挑発してる……。

光くんはイラッとしたらしく、その後は野木さんを完全に無視していた。

子供みたい……。


野木さんは、ゲームを目で追いながら、ぽつりぽつりと本音を吐露した。

竹原さんの奥さまと言葉を交わしたわけでもない私は、情報収集気分で耳を傾けた。

野木さんの嫉妬フィルターがかかってるから、話半分と思うべきかな?


「それで、春秋先生は?何を言ったの?」

いつまでたっても喧嘩の原因が見えてこないので、痺れを切らしてそう聞いてみたのは後半戦が始まった頃。

野木さんの目が泳いだ。

動揺してる?

しばしの沈黙の後、野木さんは蚊の鳴くような声で言った。

「……決定的なことは何も。不満が溜まってた野木が、切れただけかも。」

「……。」

そっか。

ちょっとホッとした。

「じゃあ、落ち着いた?」

そう聞いたら、野木さんは恥ずかしそうにうなずいた。

「何となく?……聞いてもらうだけでもスッキリするみたい。さくら女、ありがと。」

「なんも。お役に立てたなら、よかった。……でも帰りにくいでしょ?試合終わったら、送っていこうか?」

さすがに光くんにはお願いできないかな~。

チラリと視線を光くんに移す。

光くんは両手をクロスさせて×とゼスチャーして見せた。

……ダメか。

「いいよ。さくら女。ちょうどイイ機会だから、1人で頭冷やしたい。……居心地いいからって、春秋先生に頼りっぱなしだったような気がする。自分を失ってた。」

野木さんはそう言って、光くんに頭を下げた。

「ごめん。小門兄。気ぃ使わせて。」

急に素直に謝った野木さんに、光くんはちょっと戸惑っていた。


少しの躊躇のあと、光くんが言った。

「春秋氏って、たぶん、すごーく気の利くヒトだけど、優しさの押し売りとか自己主張を一切しないからさ……親切心や気遣いが空回りしてること多いと思う。別に野木さんがマイペースだから伝わらないんじゃなくて……春秋氏が繊細なんだと思う。」