小夜啼鳥が愛を詠う

「ほめ言葉を連ねてもらってるのに、何か傷つくわー。」
私は苦笑してそう言ってみた。

そんな私をじっと見て、野木さんは言った。

「あのヒトとさくら女が決定的に違うのは、幼少期の人間関係。さくら女は愛されて育ったがゆえに控えめで受け身だけど、芯はしっかりした優しいイイ子だと思う。あのヒトは施設で育ったんだって。だから、控えめというより、冷めてる気がする。でも、男性や母性愛あふれる年上の女性からは、そこが庇護欲を掻き立てるんだって。でも、年下の野木には世を拗ねてるように見える。昔はともかく充分幸せなんだから、もっと笑えばいいのに。」

……野木さん……相当たまってたんだなあ。

あまりヒトの悪口言ったり、批判するタイプじゃないのに。

てか、施設……ねえ。
また、ややこしい……。

そーゆーところも、男性にはミステリアスな魅力になって、女性には気に入らないんだろうなあ。

「……何となくわかってきた。そうね。野木さんがおもしろくないの、理解できる気がする。私も、複雑だわ。」

施設育ち……けっこう歳下……美人でもない……性格暗い?

「……竹原さん、どうして彼女と結婚したんだろう。政略結婚とかじゃないわけだから、恋愛結婚なのよね?」

そうつぶやいたら、野木さんはマジマジと私を見た。

ん?
この反応……あ、そっか。

「野木さん、知ってるんでしょ?私の遺伝子上の父親。」

「……うん。少し前に知った。……さくら女は、やっぱり心が広くて強いと思う。昨日の今日なのに、全然ショックじゃないみたい。」

野木さんにそう言われて私は肩をすくめた。

「そうでもないよ。光くんにはめっちゃ怒られて心配されてる。ね!」

わざわざ、光くんにそう振ってみた。

「怒ってない!心配してるだけ!」
噛みつくように、光くんが言った。

「……ほら。怒ってるでしょ?」
と、小声で野木さんに言った。

「まあ、心配する気持ちはわかる。義人さん、完全に、さっちゃんに落ちてた。あのヒト、ほんっと、報われない恋コレクター……」

野木さんは興味深い話を途中でやめた。

光くんが、すごーく怖い顔で野木さんを睨んでいた。

……なに?

報われない恋コレクターって……なんのこと?

えーと……それが、竹原さんの性癖ってやつ?