小夜啼鳥が愛を詠う

社長は顔をしかめた。

「そんなんちゃうから。気にせんとき。それより、薫がさっき、結婚結婚て騒いどったわ。さっちゃん、了承したって?」

「あ……はい……いえ……。あの、会社もあるし、京都で四年暮らすのは無理と返事したんですけど、薫くん、ポジティブというか……。」

ますます視線が増えた気がする。

怖いよー。

「……わかった。ほな、まずは結納やな。」

社長は、何をどう理解されたのか、パパと同じことを言った。

「あの、会社は……」

「あ。さっちゃん!野木さん来た!」

光くんがスタンドに上ってきた野木さんと明田先生を指差した。

「続きは、明日な。……ん?野木さんって、昨日の新婦やろ?」

「えー?もしかして、『卒業』?ダスティン・ホフマン?……ハローダークネスマイオールドフレンド?」

あおいさんが思いっきりジャパニーズイングリッシュで少し節を付けて言った。

古い映画の主題歌で、結婚式場から花嫁を奪って逃げるシーンが有名だ。

「いえ。単に、新郎と喧嘩らしき状態になって、飛び出したそうです。他に行き場がなく、所在のわかってる明田先生を頼ったのではないでしょうか。」

そう答えたけど、あおいさんは興味津々で2人を見ていた。

明田先生が気づいて、遠くから会釈した。

「じゃあ、あとで。さっちゃん、行こう。」

光くんがそう言って立ち上がった。

「ね。光くん。さっきの……竹原さんの性癖って……。」

歩きながらそう聞いてみた。

「聞こえなーい。知らなーい。」

光くんはそう言って、ずんずん進んだ。

……言いたくないなら、余計なこと聞かせないでほしい。

気になって気になってしょうがないんだけど。

ロリコンとか……SMとか……ゲイとか……

そんな偏ってるヒトには見えなかったけどなあ。

……てゆーか、そもそも、ママと恋愛してたなら、ロリコンでもゲイでもないよね。

残る性癖と言えば……。


「さくら女?気分悪い?」

悶々としてる私を、野木さんが気遣ってくれた。

いやいやいや。

(たぶん)傷心の野木さんに気を使わせちゃダメよね!

私は無理やり笑顔を取り繕った。

「私は大丈夫。野木さんは?いったいどうしたの?新婚旅行、今日出発じゃないの?」

「……行かない。てか、別れる予定。」