小夜啼鳥が愛を詠う

光くんは無言で息をつき、アクセルを強く踏んだ。

苛立ちを伝えるように……。

「……光くん?……怒ってる?」
恐る恐るそう聞いた。

「心配してる。」
光くんはぶすっとしていた。

「あの……何を?……竹原さん、素敵なヒトだったし、これ以上心配するようなこと……」

「素敵なヒトだから心配してるんだよ。さっちゃん、今、薫よりお兄さんのことで頭いっぱいでしょ?」

ギクリとした。

「浮気者。」
吐き捨てるように、光くんが言った。

「ひどっ!浮気じゃないもん!実の父親だもん!」
私は猛反発した。

けど、光くんは前方を睨み付けたまんま、言った。

「実の親でも異性として好きになること、ある。」

あ!
そうだった!

光くん……あおいさんをずっと……。

「……そうでした……ごめん。」
私は慌てて謝った。

光くんは何も言わなかった。



競技場に到着すると、光くんはポカリを2本買った。

「ありがとう。でも大丈夫よ。雨対策も、熱中症対策も完璧!」

そう答えたら、光くんはニコリともせずにうなずいた。

「必要なければ、野木さんと明田さんにあげればいい。野木さん、どうせ寝不足だろうし。気をつけてあげて。」

「うん。そうね。」


スタンドには既に父兄も下級生部員も並んで座っていた。

「さっちゃーん!」
あおいさんが立ち上がって、私に手を振ってくれた。

「おはようございます!」

ご挨拶しながら団体に近づく。

「大丈夫?ちゃんと寝た?」
あおいさんが心配そうにそう聞いてくれた。

「はい。薫くんが来てくれたので。」

そう答えたら、何となく……制服の女生徒に睨まれた気がした。

迂闊なこと言わないほうがいいかな。

「社長。ありがとうございました。ご心配おかけいたしましたが、大丈夫です。」

そう言ったら社長は、軽くうなずいて……それから光くんに確認するように首をかしげてアイコンタクト。

「……言ってませんよ。お友達の性癖までは!」

光くんは社長にそんなことを言った。

性癖って……。

「なんか……変わった趣味をお持ちなんですか?そんな風には見えませんが。」

小声で聞いてみた。